princess 1 【M】 ページ5
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寒々しい部屋に一人。
膝を抱えてテレビをつける。
あーーー…、つまんない漫才
絶対売れないし
冷蔵庫を開けてジュースを飲む。
あーーー…、甘ったるい
潤いの概念ひっくり返してるし
携帯を開く。
" ごめんね、会社の先輩に誘われちゃった "
あーーーーー…………、つまんないっ!
つまんないつまんないつまんないっ!!!
俊くんが居ないと
何もかもつまんなーーーい!!
早く帰ってこないかなぁ…
膝を割って頭を埋める。
その時、微かに聞こえた鍵の回る音。
俊くんだっ!!!!
瞬時に気力がみなぎって、続く「ただいまーっ」の声にすぐさま立ち上がり、小走りで玄関に直行する。
大好きな俊くんの帰宅に喜びを隠しきれない。
もしも私がメス犬だったら、きっとそこらじゅうにうれションしてるだろうな。
「おかえりなさいっっっ!!!!」
すでに靴を脱いだ俊くんが廊下の先に見える。
黒目が埋まってしまうくらい目尻を下げて、慌てた私の登場に、さらに目尻下がっていくの。
この瞬間が、たまらなく嬉しい。
今日こそは「ただいま」のハグっ!!!
(ハグだけじゃなく、盛り上がったらただいまのちゅーも有り。さらにさらに盛り上がったら、シャワー前だけど寝室直行もウエルカムです!!!!)
を、してもらうはずだったのに…
「お、ただいまA」
さほど広くはない廊下で、スルリと私を追い越すと
「ただいまマイコ!可愛いなぁ〜もう!マイコはなんでそんなに可愛いんだい??」
リビング入り口に佇む塩化ビニル製のフィギュア相手に、大きめな鼻の下ダラーっと伸ばして語りかける彼は、大分いい大人だ。
「ん?……うんうん、」
彼女を指先に抱き寄せ、それはそれは愛おしそうに、動きもしない唇へ耳を寄せて。
「えええぇ〜?マジで?トシくんのために?そんなことまでぇ!?あぁーもぉー、トシくんマイッチングだなこりゃ〜!!!」
希望、願望、欲求の三大要素をなんなくクリアしたパーフェクトな返事は、もちろん彼の脳内自動再生。
私には聞こえるはずもない。
覗いてみたいような、覗いてはいけないような、境界線で二の足を踏む。
そう、私の大好きな彼のいる世界は神聖だ。
神聖過ぎて寒イボが立つ。
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作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時