at close range (ページ25)

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womb 4 【F】ページ25

確かに今まで、母親だけは俺を疑わなかった。

「なんでそう思うか分かる？」

状況に不釣り合いなほど嬉々として問いかけてくる母親に、どこか面倒くささと、同じくらいの恥ずかしさを感じて。

「………母親だから、じゃねーの？」

サラッと答えた、つもり。

よくあるじゃん

やっすいホームドラマとかで

すると目の前の母親は、さらに得意げに続ける。

「んな訳ないでしょう」

「…はぁっ！？」

「あんたねぇ、いっくら母親だって人間よ？先生や親御さんや友だちからあれだけ言われ続ければ、あぁ太輔はもしかしたら本当にしちゃったのかなーって思ったことくらいあるわよ！」

ケラケラと悪びれもせずに笑う母親に気抜けしていくと同時に、なぜだか安いホームドラマよりしっくりときた。

綺麗事だけじゃ片付かない。

リアルなんて、多分、そんなもん。

「だろうな」って、さっきよりいくらか快然たる気持ちで答えると、母親もまた、少しだけ笑った。

「私が太輔を信じきれなくなりそうになったときはね、」

母親の視線は、静かに階段の上へ向けられる。

「いつもいつも、私以上にあんたを信じてる子に助けられてきたのよ」

母親より俺を信じてる子。

そんなバカ、アイツしかいない。

.

部屋に入ると、Aは勉強机に敷いてある透明シートを覗き込んでいた。

「あんまじろじろ見んなよ」

久しぶりにAを迎えた俺の部屋は、どことなく丸みを帯びたような、そこはかとなく温かいような、他害も危険も不安も一切ない、母親の腹の中みたいな気がした。

もちろん、胎内記憶なんかあるわけもねぇけど。

「あ、太ちゃん、おかえりなさい」

シートの中に入れてあるのは、まだ俺たちが、隣同士でいることが自然だった頃の写真。

確かめるように指で触れ、「懐かしいね」って淋しそうに笑うAの、赤みの残る瞳をじっと見つめた。

「泣いたろ」

分かりやすく目を伏せるAの横顔は、やっぱり今の俺には少しだけ優し過ぎて、しがみつきたいのに、突き放してしまう。

「もう俺に関わんなよ」

「何で？」

「別に俺とお前は家族じゃない。たかだか同じ年に生まれて、たかだか隣同士の家で育って、たかだか幼少期を共に過ごした。たったそれだけのことなんだから」

Aに言い聞かせているように見せて、本当は自分自身に言い聞かせてるんだ。