womb 5 【F】 ページ26
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しばらくすると、Aはふわりと微笑み、顔を上げた。
「……ふふっ、私ね、太ちゃんからしたら何でも信じちゃうバカかもしれないけどね、前からずっと、ひとつだけ信じてないものがあるんだよ?それは、私が私を信じてるから信じられないものなの」
Aの表情は、なぞなぞを出題する子どものように高ぶっていた。
嬉しくて、苦しいほどに嬉しくて、今すぐにでも抱きしめて、この想いをぶつけてしまいたい。
力いっぱい奥歯を噛み締めた。
「へぇ」って気の無い返事をして、
「なんだか分かる?」って続けるAに
「さぁ」って分からない素ぶりをして、
「全然考えてないでしょ」ってむくれるAに
「しつけーな」って悪態をついて、
しびれを切らしたAが
「答えは太ちゃんの自供でしたー!」って
ドヤった表情で俺を見てくる頃には、
何もかもどうでもよくなってた。
Aの腕を引っ張って、
自分の胸に抑え込んで、
そうして、力の限り抱きしめた。
俺に追い払われたAはあれから学校に戻り、いけ好かない先生たちを成敗してくれたらしい。
いつもいつも真実を突き止めては、「太ちゃんは嘘つきだ!」って、俺の母親に抗議していたらしい。
母親から言わせたら、俺を信じる真面目なAの存在自体が、黄門様の印籠だってさ。
「太ちゃんと写真、また一緒に撮りたいな」
こんなに気持ちが丸くなったのはいつぶりだろう。
抱きしめていた腕を緩めれば、上目使いで俺を見る赤らんだ瞳。
そっと手を伸ばした。
「こんなんなるまで俺なんかのために、バカだろ」
「だって悔しかったんだもん」って、俺の手を払う。
「でも太ちゃんも太ちゃんだからね!?やってないのに何でいつもいつもやったって嘘つくっ…」
いつもより少しだけお喋りなその口を、隠しきれない愛おしさで塞ぐ。
ただガムシャラに強がっていただけの俺とは違って、自分の信じたいものを信じることのできるAは、最高に賢くて強いと思った。
「太ちゃ…」
「好きだ」
俺が今まで生きてきた時間の全て、俺はAが好きだったよ。
「……本当に?」
返事の代わりに、再びAを抱きしめた。
これから俺が生きていく時間の全ても
俺はAのことが好きだよ
そんな未来も、
Aならきっと信じてくれるだろう
【end】
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作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時