love letter 1 【Y】 ページ27
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" わたー、おかえりー! "
" 声でかい "
" お腹は? "
" いらない "
「おかえり」には「ただいま」って、「お腹は?」には「空いてないよ」って、そんな当たり前の返答すら失ったことを、過ごしてきた時のせいにだけはできない。
" 結婚しよーよ! "
もはや口癖レベルとなったこの言葉に、返し続けた「やだよ」も、いつの間にか俺の口癖になっていて、「とりあえずすぐに拒否んなよ」って、何度も友だちに非難された。
高二から付き合って十二年。
俺が今まで経験した人生の岐路のほとんどにAはいた。
俺の傍ら、口も挟まず、金も出さず、ただ隣にずっといた。
十二年は長いと思う。
産まれたばかりの赤ちゃんが、中学生になるほどの歳月は、とても、長いと思う。
何も分かってなかったんだ。
怒っても数十分後には笑っているAに「お前怒ってたんじゃねーの?」なんて、逆に嫌味なんか言ったりして。
Aなら俺の全てを受け入れてくれると、離れていかないと、高を括っていた。
Aとの未来をすでに手に入れたような気になってた。
だとしたら十二年なんて、とても短い時間だったのかもしれない。
……いや、違うか
ただ単純に、俺がバカなだけだ
俺の一方通行の信頼は、ただの甘えだったんだって、今、君を失ってやっと身にしみてる大バカ者だ。
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" ねぇ!私が書いたラブレターってどこにある? "
" はぁ?そんな前のわかんねーよ "
" ちぇー。結婚式の余興で読み上げてもらおうと思ったのにー "
前々からメンタルは強めだなと思ってはいたけど、どうしたらこんなにも明け透けになれるのだろうと甚だ疑問に思った。
" 俺まで火傷おいそうだからやめろ "
本当は知ってたよ。
あの茶封筒がどこにあるかなんて。
久しぶりにクローゼットを開けると、手紙の入っているダンボールより手前に、長方形の薄い箱を見つけた。
" ねぇ、人生ゲームやろーよ!! "
Aはやたらと人生ゲームが好きだった。
ボード上で大金を手にしたり、破産したり、捕まってみたり…、どんな状況になっても彼女は笑顔でサイコロを振り続ける。
その姿に敵ながら頼もしすら覚えて、俺とAの人生はまるで同じ軌跡を描いていくのだと、錯覚していたのかもしれない。
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作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時