womb 2 【F】 ページ23
.
「あれぇ?太輔今から帰りー?」
キーンと耳に突き刺さるような甲高い声に、腹の虫はさらに居どころを悪くする。
「呼び出しくらってた」
「またぁ?何したのぉ?」
「お前らに関係なくね?」
「冷たーい!ねぇ、一緒に帰ろうよ!これからカラオケ行くよー」
「やだ」
「えー、またそんなこと言うー、いいじゃん、ねぇ!?」
声量の調節ネジが壊れてんのか?
似たような格好をして、似たような匂いを撒き散らし、似たような笑顔を浮かべた二人の女がズカズカと土足で俺の両脇を荒らしていく。
「…っせーんだよ、マジで」
.
咎めるような、それでいて怯えるような、そんな素振りと表情で、吹きっさらしの通学路を先に行くふたつの背中を見つめ、小さく舌打ちをした。
" 藤ヶ谷、見たんだろ? "
カンニングを疑われ、職員室に呼び出された。
カンニングしてまでいい点をとろうと思ったことなんかない。
そこまでテストに重点を置いてない。
ただ、たまたま、本当にたまたま、この前アイツが勉強してた問題が出たから
あの薄くて幼い字を思い出しながら、答案用紙に書いただけなのに。
昔っからそうだ。
クラスで何かが無くなれば真っ先に疑われるのは俺だったし、誰かが親の財布から金を盗めば、いつのまにか俺の指示になっていた。
近所でピンポンダッシュが頻発したとき、タバコの吸い殻が見つかったとき、上は万引きから下はゴミのポイ捨てまで。
身に覚えなんかないのに、みんなの頭の中にはすべての悪事に手を染める俺がいるんだ。
時間の無駄だと思った。
"やってない"って言葉は何回言っても信じてくれないくせして、"やった"って言葉は瞬時に信じるってことを、俺はもう、よく知ってる。
" テストって見たらダメなんだっけ? "
何もかもにイラついた。
何もかもに嫌気がさした。
何もかも、どうでもよくなった。
もう、辞めちまおうかな…
焦燥感を誤魔化すために、ぎゅっと眉間に力を入れて歩く。
強くありたい
ただ、強く
「太ちゃーん!!!!」
背後から飛んできたのは、なんの色も纏わない、無色透明な大声。
俺の脇まで駆け寄って来ると、はぁはぁと肩で息を整えて顔を上げる。
薄紅色の頬がに小さなえくぼが出た。
Aの温度を溶かした空気があたり一面に漂って、戸惑いを隠せない。
134人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時