fireworks 2【Ki】 ページ32
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真っ赤なバラを惜しみなく使った渾身の花束を、北山さんはとても喜んでくれた。
「すっげぇー!こんなん映画とかでしか見たことねぇー」
「お気に召していただけて嬉しいです」
もしかしたら北山さんが来店するのは、今日で最後かもしれない。
不思議と、そんな予感がしていた。
そして正直、今ならまだなんとか大丈夫だって、ほんの少しホッともしていた。
「じゃあこちらにお名前をお願いしまっ…」
そんな私情なんて知る由もなく、サインの代わりに突き出されたのは、たった今私が渡したばかりの真っ赤なバラの花束。
「Aさん、今度俺とデートしてくれませんか?」
まさか…、って
「……アレ?赤、好きなんでしょ?」
急激にたまらない気持ちになった。
「やっぱ使い古された手法だったか?」
北山さんへ感じる愛しさの激流のもと、"母親"という名の岩にしがみつくオンナの私が卑しくて、
「……ダメ、っすかね?」
ただ、涙しか流せなかった。
「…た山さん、………ったし…、結婚、…してるんです」
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「マジかー!指輪もしてねーし、すっげぇ可愛いし…、あー、まさか結婚してるなんて思わなかったわぁ〜」
私の告白を聞いて、あくまで明るく笑う北山さんに軽さを一切感じないのは、自惚れでもなんでもない。
私はこの一ヶ月間、私の好きな色を知るためだけに来ていてくれたことを知っている。
「指輪は….、荒れるから外してて………」
「まっ、仕方ないね。別に幸せを壊す趣味はないから」
このまま注文書にサインをもらい、きちんとお代を頂いて、「ありがとうございました」って頭を下げることはいくらでもできたの。
でも……、
私は言った
言ってしまった
言いたくなってしまった
これを聞いて北山さんの態度や気持ちが変わるなら諦めもつくって、引き止めたかっただけの自分についた言い訳を、私はこの先もずっと忘れない。
「三年前に主人は事故で亡くなってて…、四歳になる息子と二人暮らしなんです」
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作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時