fireworks 1【Ki】 ページ31
仰向けになった無残なセミの姿を至る所で見かけ、微かな秋の香りが夕風に混ざり始める。
そんな、少しだけ淋しい、夏の夕方。
「ママ、花火、楽しみだねぇ」
「…ほんと、楽しみだね」
左手に小さなバケツを持ち、右手で私の手をぎゅっと握りしめるのは、五歳になったばかりの晴人。
" A!晴人!!明日一緒に花火でもしない? "
北山さん………、
今日で、さよならをしましょう
.
.
━━━━ 一年前
「いやぁ〜、今日も暑いっすね」
「本当ですね、…はいっ、お待たせしました。いかがでしょうか?」
「おっ、今日はしっぽり大人なチョイスできた感じー?」
「ふふっ、それなりに引き出しはあるんですよ?」
勤めていた花屋さんに、北山さんが初めて来店したのは、今から一ヶ月ほど前だった。
それからだいたい二、三日置きにやって来ては、小さな花束や花かごを注文していく。
いつも色合いやお花の種類はお任せで、あまり似たようなものばかりにならないようにするのは苦労したけど、本来負けず嫌いな私は、次回はこうしよう!こうしてみよう!なんて張り合って、いつの間にか彼の来店を心待ちにしていた。
「Aさんってさー…、ズバリ、赤が好きでしょ?」
「え?」
「なんとな〜くね、一ヶ月も専属お願いしてたら分かってくるってもんよ」
「悔しい、けど、…当たってます。あー、好みに偏らないように気をつけてたのにー」
悔しがる私を見て北山さんは得意満面。
「やっぱりなぁ〜」って、笑顔を弾けさせる彼に、私もお腹の底から笑っていた。
こんな自然に笑うことが、逆に不自然に感じて、懐かしいような、切ないような、そんなソワソワとした気持ちになってしまう。
北山さんには、こうしてお花をプレゼントする相手がいる。
そして私にはまだ小さな晴人がいる。
浮ついた自分を、こうして戒めたことは一生の秘密にしよう。
「ちょうど良かったわ。この花をプレゼントする相手も赤が好きなんだよね」
「……そうなんですね!じゃあ本当、ちょうど良かったです!」
「明日も来るから。そうだなー…、明日はさ、真っ赤なバラの花束、お願いしてもいい?」
北山さんから初めてもらったリクエストは、両手で抱えちゃうほど大きな、真っ赤なバラの花束だった。
チクン…って、棘が刺さったような痛みを、胸に感じて、慌てて誤魔化した。
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作者名:ななは | 作成日時:2018年7月28日 1時