episode７ ページ25
違う、違うんだ。
謝らなきゃいけないのは俺なのに。
せっかく和真が俺に助けを求めて電話をくれたのに。
全速力で走ったら、すぐに到着する距離に和真の家があるのに。
俺は寝る時の癖である「マナーモード」により、和真のヘルプに気付けなかった。
悔しい、悔しい悔しい。
どうして俺はこんなにも無力なんだ。
どうして俺はこんなにも役に立たないんだ。
俺は和真の恋人なのに。
俺は和真の家族になる人間なのに。
これじゃあ、和真の恋人だって胸を張って言えねえよ。
『け……賢二郎？』
何も反応がない俺を心配したのか、スマホの向こう側からは不安げな和真の声が聞こえる。
『……賢二郎、あのさ、聞いて欲しいことがあって』
白布「……うん」
『俺、当分賢二郎と連絡とれないと思う。工は三日後くらいから学校に行くと思うけど…俺は家のことがあるし、ばあちゃんの葬式のこともあるし、今後のことも親戚と話し合わなきゃだし』
白布「………うん」
『電話をくれたとしても多分出れないし、LINEも返せない』
白布「……分かった」
『だから少しだけ、俺のこと待っててくれない？』
白布「当たり前だろ。待つよ、ずっと」
『良かった』
安心したように小さく息を吐いて言う和真の声が聞こえた。
『……賢二郎』
白布「ん？」
『………あのさ、』
白布「どうした」
小さな声で言う和真は、暫し黙り込んだ後、ぽつり、と呟くように言った。
『…………会いたい』
その言葉が、俺にとってどれほど大切な言葉か。
『……今すぐ、賢二郎に会いたい』
その言葉が、和真に何もしてやる事の出来ない俺にとって、どれほど温かい言葉か。
『……賢二郎に会って、たくさん抱きしめて欲しい』
俺だって、和真に会いたい。
苦しい、離して、息ができない、と言われても、力強く抱き締め続けたい。
『…賢二郎がそばにいてくれなきゃ、俺、……ダメになりそうだよ』
再び俺の目尻から大粒の涙が溢れ出ると、声を押し殺す事も忘れて、俺は情けない声を出しながら泣き始めた。
スマホの向こう側にいる和真も俺と同じように、ひくっひくっ、と喉を鳴らしながら泣いている。
→
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
連斗 - 磯野さん！退院おめでとうございます！この作品の投稿！ずっと待ってました！これからも応援させていただきます！無理なく頑張ってください！ (2022年10月22日 21時) (
レス) id: c0be3ab978 (このIDを非表示/違反報告)
バナナくん(プロフ) - 磯野さんだ〜！！まず退院おめでとうございます！久しぶりに占ツク開いてみたら通知欄に磯野さんの名前があってめっっっっちゃ嬉しかったです！今後も自分のペースで頑張ってください！ (2022年9月2日 1時) (レス) @page48 id: 5cd13d94ad (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - 彩都さん» 彩都様、ご無沙汰しています！いつもいつも私の作品に目を通して下さりましてありがとうございます！今回はこの時間帯に更新します、とご報告出来ませんがなるだけ毎日更新致しますね。よろしくお願い致します！ (2022年8月20日 0時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
彩都(プロフ) - おかえりなさい！退院？おめでとうございます！待ってました！磯野様のペースで更新してください！楽しみにしています！ (2022年8月20日 0時) (レス) @page10 id: 11dbb3cd4a (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - ゆぅさん» ゆぅ様、大変長らくお待たせ致しました。随時更新していきますので、よろしくお願い致します！ (2022年8月19日 23時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：磯野
| 作成日時：2022年8月19日 21時
