episode4 ページ15
白布「太一」
川西「賢二郎、…美濃の…美濃のばあちゃんが…」
白布「え…」
川西「美濃のばあちゃんが…っ」
荒い呼吸を繰り返す太一は一度唾を飲み込むと、震える声で確かにそう言った。
川西「美濃のばあちゃんが、…倒れた」
ひゅっ、と変な声が喉から湧き上がり、俺はその場に持っていたスマホをぽたりと落とす。
全身から血の気が引き、瞬きをする事も忘れて太一を見上げ続けた。
やっぱりそうだ。
やっぱり、和真のばあちゃんに何かあったんだ。
白布「嘘……だろ…」
川西「今、寮監が五色を実家に送る準備してて…」
白布「五色……五色!!」
そうだ、五色は和真の親戚だ。
俺は部屋から飛び出すと、五色の部屋へと走り出した。
他の部屋にいる仲間達も、騒がしい廊下の音で目が覚めたようで、ちらほら部員達が部屋から出ていた。
廊下を走る部員達が俺と太一に「どうした白布」と声をかけるけれど、俺はその声に反応する余裕がなく五色の部屋へ向かった。
すると、
「五色くん!早く!」
玄関から声がし、俺と太一はピタリと足を止めた。
足を止め、玄関へと顔を向けると、そこには寮監とTシャツ、短パン姿の五色がいた。
白布「五色!」
玄関にはもう既に複数の部員達が心配そうな顔で立っていて、五色は外履きに履き替えると、俺の声に反応するように振り返る。
白布「五色…っ、和真のばあちゃんが…」
はぁはぁ、と息を乱しながら五色にそう言えば、五色は眉を寄せながら不安げな表情で俺を見つめた。
五色は何も言わない。
ただただ、唇を固く結び、眉を寄せて俺を見つめる。
白布「五色」
五色は一度俺から目を逸らし瞼を閉じる。
きゅ、と両手で握り拳を作った五色は、閉じた瞼を開くと、再び不安げな瞳を俺に向けて言った。
五色「白布さんは、ここで待ってて」
それだけを言うと五色は俺に背中を向け、寮監と一緒に玄関から外へ出た。
残された俺は、五色が出ていった玄関を見つめる。
五色のあの、不安げな瞳。
それは、和真のおばあさんの状態を目で表しているかのようで。
そして、今後の和真の未来を表しているようで。
俺はその場から動けず、ただただ、五色が消えた玄関を見つめる事しか出来なかった。
To be continued
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連斗 - 磯野さん!退院おめでとうございます!この作品の投稿!ずっと待ってました!これからも応援させていただきます!無理なく頑張ってください! (2022年10月22日 21時) (レス) id: c0be3ab978 (このIDを非表示/違反報告)
バナナくん(プロフ) - 磯野さんだ〜!!まず退院おめでとうございます!久しぶりに占ツク開いてみたら通知欄に磯野さんの名前があってめっっっっちゃ嬉しかったです!今後も自分のペースで頑張ってください! (2022年9月2日 1時) (レス) @page48 id: 5cd13d94ad (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - 彩都さん» 彩都様、ご無沙汰しています!いつもいつも私の作品に目を通して下さりましてありがとうございます!今回はこの時間帯に更新します、とご報告出来ませんがなるだけ毎日更新致しますね。よろしくお願い致します! (2022年8月20日 0時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
彩都(プロフ) - おかえりなさい!退院?おめでとうございます!待ってました!磯野様のペースで更新してください!楽しみにしています! (2022年8月20日 0時) (レス) @page10 id: 11dbb3cd4a (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - ゆぅさん» ゆぅ様、大変長らくお待たせ致しました。随時更新していきますので、よろしくお願い致します! (2022年8月19日 23時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:磯野 | 作成日時:2022年8月19日 21時