【名探偵コナン】黒ずくめの組織の下っ端

人の不幸話で飲む酒は ページ8

｢…お、来たな｣

｢来てやったぞこの野郎｣

｢相変わらず口悪いなお前は｣

｢お前に言われたくないよ、松田｣


命の恩人になんて口叩きやがる。


6年前、だったか。

友人に紹介された松田は、私を見て開口一番にこう言った。

｢萩原が言うからどんな美人かと思ったら…普通だな。中の中…いや、おまけして中の上か？｣

まぁ殴って帰ったよね、うん。

後日、その紹介した萩原から謝罪がありました。

当たり前だ。


｢久しぶりだねー、氷菓ちゃん｣

｢本当に久しぶり。都合が合わないんだよなー。うちブラック企業だから｣


相変わらずチャラい萩原。

真っ黒な組織だから間違ってない。


｢そういえばなんの仕事してるんだ？｣


今聞いてきた伊達は、去年居眠り運転で引かれそうになったらしい。

その居眠り運転のトラックを止めたのが私…らしい。

曖昧な理由は、私が必死になりすぎて記憶がほとんど無かったから。

そのことについてはまた今度。


今では子供もいる伊達は、そりゃあもう幸せそうだ。


｢それは秘密｣

｢…危ない仕事じゃないよね？｣

｢盗聴されてる時点で危ないだろ｣

｢｢盗聴？｣｣

｢おい松田｣

｢お前から言ってきたんだろ｣


言いやがったな。

うまく誤魔化すしかないか…。


｢また巻き込まれただけだ。私からはなにもしてない｣

｢｢｢またか｣｣｣

｢うるせ｣


何でこんなところで声揃えてくるとか…腹立つわぁ。

いや、確かに私は巻き込まれすぎだけどさ。

そんな声揃えて言うことないでしょ。


｢盗聴器は壊してきたし、安心してよ｣


一度家に帰った時に着替えて、洗濯したから壊れたと思う。


｢それより松田｣

｢何だ？｣

｢最近どう？恋路のほうは？｣

｢…あ？｣


え、なんか凄い睨まれたんですけど…なんで？

松田には、片思い3年目に突入する女性刑事がいるらしい。

名前は確か…佐藤さん、だったか？


｢それがさぁ、聞いてよ氷菓ちゃん｣

｢おい萩原！｣

｢後輩刑事にとられちゃったんだって｣

｢え、マジで？｣

｢うるせぇ取られてねぇよ！｣

｢それが偶然にも、その後輩刑事ってのが、俺が教育係で世話したやつでな…｣


oh...頑張れ松田。

まだチャンスはあるだろ、多分。


ゲラゲラ笑いながらビールを煽る。

人の不幸話聞いて飲むほどうまい酒は無いよね。


一頻り笑ったあと、枝豆を頬張る。

うまし。

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