モブらしいモブ作品ってないよね（学パロ）・２ ページ10
「手伝ったろか」
えっちらおっちら、段ボール箱を三つ重ねて廊下を歩いていると、声がかかった。前方の壁に寄りかかっているのは――えっと。
「……えっと」
「ゾムって知っとる？」
「ああ」
咄嗟に名前が出てこなかった。頷いて、頼めるなら、と答えれば、彼はにっこりと微笑んで私の腕から段ボール箱をふたつぶん、奪い去った。……頼まれたのは私なのだけれどな。
「女の子に重い方持たせてると、妙な目で見られるからなあ」
彼はのんびりとした口調で言って、どっち？ と尋ねてくる。視聴覚室へ、と短く答えれば「そ」と先導するように歩き出した。
「Aさんやろ」
不意を突かれて、私は瞬きをした。彼の表情は彼の背中そのものに遮られて見えない。
「……そうですけど、」
「美術の合同授業で一緒やんな」
……知らなかった。
だからあんたは他人に興味がなさすぎるって言われるのよ、そう怒る友人を瞼の裏に幻視する。
この人はわりあい目立つ人みたいだし、そんな人に私が覚えられている時点で、確かに、周りに興味がないという評価は撤回することもできないようだった。
そんな私の考えを知ってか知らずか、彼は私のフォローをするように言葉を続ける。
「あんた、いっつも美術の最中は絵に集中してんし、気づかんくても無理ないと思うけど」
「そう、ですか」
「はは、なんで敬語なん。一応同学年やぞ？」
からからと笑い飛ばす彼。私は内心首をひねった。なんというか、友人に延々と聞かされていたよりも、なんだろう、会話の距離感がどうにも近い、ような気もする。
「お、ついたついた。しかしこれ、女子一人に任せるってどうなん」
「手がちょうど空いてたのが私だった、んじゃ、ないかな」
「ふうん……」
段ボール箱を視聴覚室の机の上におろして、軽く肩を回した彼は、私の方を振り向いた。私はぱちくりと目を瞬かせた。
「あんた、絵ェ上手いよな」
美しく微笑んでいる。
「俺、好き」
一拍おいて、そうですか、ありがとうございます、と私は答えた。彼は少しだけ小首を傾げて、つまらなそうな顔をした。
「顔色一つ変えないのは、前途多難……ま、燃えるし、いいけど」
「……は？」
「なーんでも」
小さな呟きは聞こえなかった。
(続く、かも？)
本名バレしたら正体もバレるやつ（ファンタジーパロ）→←モブらしいモブ作品ってないよね（学パロ）・１
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弥兎。(プロフ) - 文の構成だったり、心情表現だったり、全てが好みで読みやすいです。『はい上官』が特に気に入ってます。これからも活動頑張って下さい、影ながら応援させていただきます！ (2019年10月1日 17時) (
レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)
スギ花粉(プロフ) - 初めまして、こんにちは。 「配信中に〜」のスピンオフ番外目当てで読み始めたのですが、それ以外の作品もとても素敵で気付いたら全部に目を通していました。「そんな夢を見ました」が特に好きです。 素敵な作品をありがとうございます、これからも応援しています。 (2019年8月25日 19時) (レス) id: c38b9cd639 (このIDを非表示/違反報告)
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