モブらしいモブ作品ってないよね（学パロ）・１ ページ9
「ゾムさん？」
「そ」
あだ名なんだけどね、と友人は頷く。
「人気なんだよ」
「へえ」
「興味なさそうだね」
まあ実際、興味はないので仕方ない。そうなんだ、と曖昧に頷くと、友人の恋話くらい真面目に聞け、と怒られてしまった。とは言いつつ、友人自身だってミーハーな感じの恋心しか抱いてないというのが現状だ。それ以前に、彼女には彼氏がいる。
「ほら、噂をすれば」
あそこにいる、と指をさされたものだから、ふ、と視線を辿ってみた。楽しそうに、友だちなのだろう人たちと喋りながら歩いている、男。
確かにはたから見れば、騒がれる程度には端正な顔立ちをしているのかもしれないな、と私は思った。
「フード被ってる」
「そうそう」
「校則違反じゃないの」
「……」
あんたは風紀委員か、と小さく呟かれた。若干呆れたような声音だった。
私はぼんやりと彼を眺める。友だちに小突かれた彼が、何の拍子なのか、こちらを見上げた。ばち、と目が合った――ような、気もする。
にっこりと笑って、手を振られた。
「ふぁ、ファンサ……」
手すりに掴まって、顔を真っ赤にして、ふしゅふしゅと沈み込む友人。私はそれを視界の端で一瞥して、ふい、と顔を背けた。
なんというか、こうやって騒がれるのにも慣れてる人なんだなあ、としみじみ思った。
「ゾム」
「なーに」
「お前があんなあからさまにファンサするなんて珍しいやん」
そう言われて、まあそうやな、とゾムと呼ばれる青年は笑った。
彼女を取っ替え引っ替えしている噂が周知であってもなお、あれだけ色めき立った声を上げられるあたりは、彼の独特の雰囲気がそうさせるのかもしれなかった。
「まあ、ファンサというかなあ」
ゾムはそんなことを言う。どうしたんだ？ そう首をかしげるクラスメイトたちの前で、うっそりとした声音で、優しく撫でるような声音で、彼は答えた。
「――だって、あの子、欲しいんよ」
「えっ誰」
――あるいは、獣が獲物を見つけたような声音で。
モブらしいモブ作品ってないよね（学パロ）・２→←地獄行き列車がまいります！（軍パロ）
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弥兎。(プロフ) - 文の構成だったり、心情表現だったり、全てが好みで読みやすいです。『はい上官』が特に気に入ってます。これからも活動頑張って下さい、影ながら応援させていただきます！ (2019年10月1日 17時) (
レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)
スギ花粉(プロフ) - 初めまして、こんにちは。 「配信中に〜」のスピンオフ番外目当てで読み始めたのですが、それ以外の作品もとても素敵で気付いたら全部に目を通していました。「そんな夢を見ました」が特に好きです。 素敵な作品をありがとうございます、これからも応援しています。 (2019年8月25日 19時) (レス) id: c38b9cd639 (このIDを非表示/違反報告)
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