返事させろ（怒）zm視点 ページ7
「ゾムー！」
桜舞い散る中での卒業式。天候は青空、まあ卒業日和といえばそうなんやろうな、と思う。
かったるい式も終わって、友人たちと小突き合いながら帰路につこうとしていたそのとき、校門を出たところで高い声が俺の名前を呼んだ。この声はAやんな、とすぐに気づく。彼女を取っ替え引っ替えする俺を眺めて、呆れたように笑っていた女友達。
「今までもこれからも、君に恋してるよー！ 友達でいてくれてありがとー！」
数秒の間が空いた。
友人たちは静まり返って、脳内でわんわんとAの台詞が反響した。
「は？」
素っ頓狂な声をあげた頃には、Aは俺にくるりと背を向け、意気揚々とバスに乗り込んでいて――いや、おい、待てやコラ。慌ててスタートダッシュを切るものの、当然バスに人間が追いつけるはずもなく。
え、ええ……ただバスを見送るしかなかった俺。追い付いてきた友人が同情するかのように俺の肩を叩いて、一言。
「いやあ、喜ぶべきか残念に思うべきか、な、本命ドーテーさん」
「しばく」
とりあえずその友人は派手にしばいたった。
Aの連絡先は知っていたが住所は知らず、その連絡先も着信拒否やらブロックやらされていたようで、なんとか数日後、探し出した彼女の家を訪ねた。
「Aは卒業式の日に引っ越しましたよ？」
不思議そうに言うAの親に、俺はただ「そうっすか」と言うしかなかったわけである。
だから良い子ちゃんだった俺が、あのアマ、と内心悪態を吐いたのも致し方ないワケ。そう。だからそんな目で見ィひんといてくれます？
数年経った頃。旅行先でふと見かけた後ろ姿がAによく似ていてつい目で追った。すると信号待ちの際、見えた横顔に数秒釘付けになった。――間違いない、と細胞が叫ぶ。間違いなく、俺に告白をやらかしといて返事もさせずに消えよった、女。
視線を感じてなのか、振り返ったAが俺に目を止める。
俺はにっこーと笑う。
信号が青に変わる。
Aはあの日の俺と同じように、スタートダッシュを切った。俺は間髪入れずに追いかけた。
「つーかーまーえーた」
「ひう」
小さな小さな悲鳴を上げたAに、俺はあえて優しく微笑んでみせる。何故かAの表情はますます引き攣ったけれども、まあ、それは俺と会えたのがとっても嬉しいってことでええんやろ？ なあ？
――ここまでだいぶ手間かけさせられたんや。いい加減、我慢せんでもええよな？
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弥兎。(プロフ) - 文の構成だったり、心情表現だったり、全てが好みで読みやすいです。『はい上官』が特に気に入ってます。これからも活動頑張って下さい、影ながら応援させていただきます！ (2019年10月1日 17時) (
レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)
スギ花粉(プロフ) - 初めまして、こんにちは。 「配信中に〜」のスピンオフ番外目当てで読み始めたのですが、それ以外の作品もとても素敵で気付いたら全部に目を通していました。「そんな夢を見ました」が特に好きです。 素敵な作品をありがとうございます、これからも応援しています。 (2019年8月25日 19時) (レス) id: c38b9cd639 (このIDを非表示/違反報告)
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