赤信号の手招き・２（妖怪パロ） ページ28
「で」
畳の上にAは正座している。その目の前に仁王立ちした男――Aの幼馴染であり、周囲からトントンと呼ばれる彼は、呆れたように首を横に振った。
「なんであんなもん連れて帰ってきたわけ」
「懐かれたから」
「なんで懐かれとんじゃボケ」
「腹が空いていると言ったから」
「誰彼構わず飯をやるなアホ」
「誰彼構わずじゃない。死ぬほど腹を空かしていた。私は有り余るほど持っている」
懇々と説教するトントンに対して、淡々と反論するA。表情は小中高大と続けて「鉄仮面」と密かに、あるいは堂々と呼ばれる程度には動かない。一見悪びれていないような態度にも思えるが、トントンにはわかる。
実際この幼馴染は全く悪びれていないことを。
溜息をこらえたトントンは、ダイニングルームの方に一瞥をやる。ダイニングチェアに腰掛けて、テレビを眺めていた男はトントンの視線に気がついたのか、こちらを見た。すぐにテレビに戻った。興味もないらしい。
男の服装は、今は普段着にしている人間も珍しい、和服だ。灰色に若干暗い黄緑を混ぜたような色の――ちなみにAはその色に対して「
ちなみに来た際は紛れもなく獣、巨大な狐の姿をしていた。尻尾は合計五本あった。どっからどう見てもただの人間ではないし、ただの獣でもない。
――(名字)Aという人間は、ヒトならざるものが見える、その話す言葉が聞こえる、対話もできる、という性質を持ち合わせていた。
そして、いわゆる霊力と呼ばれるような、ヒトならざるものと関わり、自身もそういう奇跡を起こせる力を無尽蔵に持ち合わせている。
要するに霊感チートだ。
そしておそらく、男はAの力に引き寄せられて――その霊力を喰らおうとした、というか実際に喰らったのだろうと、トントンはなんとなく確信していた。というか確信せざるを得なかった。そりゃあそうだ。
突然真夜中近くに電話をかけてきた幼馴染を迎えに行ったトントンが見たものとは、いつも通りの真顔ではあるが心なし面倒そうな顔をしたAの姿と、Aの腕に食いついて離れない巨大な獣がいたのだ。
ドン引きするしかあるまいよ。
無言で車の中に迎え入れて、自分のアパートまで案内したトントンは自分のことを紛れもなく大天使だと自負していた。してもいいと思う。させてくれ。
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弥兎。(プロフ) - 文の構成だったり、心情表現だったり、全てが好みで読みやすいです。『はい上官』が特に気に入ってます。これからも活動頑張って下さい、影ながら応援させていただきます！ (2019年10月1日 17時) (
レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)
スギ花粉(プロフ) - 初めまして、こんにちは。 「配信中に〜」のスピンオフ番外目当てで読み始めたのですが、それ以外の作品もとても素敵で気付いたら全部に目を通していました。「そんな夢を見ました」が特に好きです。 素敵な作品をありがとうございます、これからも応援しています。 (2019年8月25日 19時) (レス) id: c38b9cd639 (このIDを非表示/違反報告)
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