そんな夢を見ました（学パロ） ページ15
「うっわ」
私は思わず顔をしかめた。グランドいっぱいに縦横無尽に引かれた白線。何かしらの予感がして、ぱっと校舎を振り仰げば、一番上の渡り廊下のところで緑のフードを被った男がひらひらと手を振っていた。ゾムというあだ名で呼ばれる、この学校の教師である。
身を翻して校舎内に飛び込んで、階段を駆け上がり、渡り廊下へと足を踏み入れる。ぜい、ぜい、と息を切らしている私に「相変わらず体力ないなあ」とゾム先生は楽しそうに笑っていた。
「見てみい、A」
ゾム先生は私の腕を引っ張っていき、校庭に引かれた白線を指差すと、まるで子供のように笑う。
「ナスカの地上絵、縮小版」
「……はあ……」
私は深々と溜息を吐き出した。そしてさっき掴まれていた手で、ゾム先生の手を握った。
「お、積極的ぃ」
揶揄うような声音のゾム先生を無視して、すう、と息を吸った。
「ゾム先生ここで捕まえてますからはよ来てくださーい！」
大声を上げると、咄嗟に耳を塞いだゾム先生がそれでも私の台詞を聞き取って、若干頬を引き攣らせた。
「えっちょっA」
「なんですか」
「俺怒られるのヤなんやけど」
「いや自業自得以外の何物でもないでしょ」
「もうしーひんから許したって？」
「言ったあとなので無理ですね」
そんなあ、と情けない声を上げるゾム先生だけれども、それなら私の手を振り解いてさっさと逃げればいいのにそうしない。やっぱりゾム先生も若干反省してはいるんだろうな、と私としては思うわけである。
でもゾム先生の「もうしーひん」はだいたい「またやる」なので信用できないのもまた事実。
「くぉらァ、ゾム！」
「やっべ」
「あっ」
とかそういうこと考えてたら鬱先生とかシャオロン先生の大声が聞こえて姿が見えて、途端に私の手を振り払ってゾム先生は逃げ出した。
あーらま、とその背を見送れば、シャオロン先生は私の横をすり抜けていって、鬱先生は「いつも悪いなあ」と私に向かって溜息交じりに呟いた。
「……大人って大変ですね」
「あいつは子供みたいなもんやけど」
「構ってほしいからって悪戯するとか、子供か！」
「やって教師は生徒に手ェ出せへんし……」
「手ェ出してたら免職ものやわ我慢せい」
「我慢しとるわ。悪戯で手ェ打ってるやないの」
「物理的な距離感、だんだんおかしくなってってるけど！？」
「かーわええよな、あれで捕まえたつもりなんやって」
「もうお前逮捕してもらい」
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弥兎。(プロフ) - 文の構成だったり、心情表現だったり、全てが好みで読みやすいです。『はい上官』が特に気に入ってます。これからも活動頑張って下さい、影ながら応援させていただきます！ (2019年10月1日 17時) (
レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)
スギ花粉(プロフ) - 初めまして、こんにちは。 「配信中に〜」のスピンオフ番外目当てで読み始めたのですが、それ以外の作品もとても素敵で気付いたら全部に目を通していました。「そんな夢を見ました」が特に好きです。 素敵な作品をありがとうございます、これからも応援しています。 (2019年8月25日 19時) (レス) id: c38b9cd639 (このIDを非表示/違反報告)
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