本名バレしたら正体もバレるやつ（ファンタジーパロ） ページ11
「俺の名前な、」
柔らかに微笑んだ、その瞳の、色。
「――って言うねん」
思い出せない。
「ゾムー」
「なんや」
うー、と声を漏らして縮こまった私に、ゾムは「まーたなんかあったんか」と笑いながら私の背を叩く。
「どした？ 何があった？ 相手俺が殺したろか？」
「いや殺さなくていい」
「なんや即答して。つまらん」
いや、つまらんじゃなくてね……というか励ますための言葉じゃなかったんかおのれは。
私は思わず半目になった。どうした？ ゾムは小首をかしげる。くそう顔が良い。ついでに声もいい。
「就職先が見つからない」
「相変わらず苦労しとるんやなあ。俺はほれ、この通り」
「ゾムがどこ就職したかなんぞ興味ない」
「おま、いてこますぞ？」
「出来るものならどうぞお好きに」
やさぐれて吐き捨てると「重症やな」とゾムが呟くわけである。だってさあ、ここまで頑張って勉強も必死に頑張ってきたっていうのに、まさかの就職氷河期で落とされるなんて本気でどうかしてると思わないだろうか。
「第一、私に魔王に命を捧げなくちゃならない的な予言が降りてるからって雇わないのマジでどうかしてると思う」
「それ、魔法学校悉く落とされたときにも同じこと言ってたなあ」
「キレそうだった！」
「いやキレそうだったも何もあのときもキレてたやないの。キレてないみたいな言い方すな」
ごもっともですがどちらにせよ私の就職活動はまだまだ続くということだ。はーあ、と溜息を吐き出して机に突っ伏した私に、ゾムはニヤニヤとした表情がわかるような声音で言葉を投げかける。
「なんなら俺に永久就職したるか？」
「……それ女の子たちが噂してたから条件知ってるよ。ゾムの本名当てられたら、でしょ。いやそもそもなんで幼馴染なのに私はあなたの本名を知らないんだ」
「Aなら本名当てんでもえーよ」
「いーいーでーすー、施しなんかされなくても自力で就職先探します！」
「そーかそーか」
意地っ張りに叫ぶ私を目を細めて眺めながら、ふと、ゾムは呟いた。
「すべてを差し出すってのが、何も命とは限らんと思うんやけどなあ」
「はい？」
「なーんでも？」
ま、どうにせよ予言で俺のところに来るってのは決まってるんやから、ゆるゆると待ちますか。
モブらしいモブ作品が欲しいよね→←モブらしいモブ作品ってないよね（学パロ）・２
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弥兎。(プロフ) - 文の構成だったり、心情表現だったり、全てが好みで読みやすいです。『はい上官』が特に気に入ってます。これからも活動頑張って下さい、影ながら応援させていただきます！ (2019年10月1日 17時) (
レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)
スギ花粉(プロフ) - 初めまして、こんにちは。 「配信中に〜」のスピンオフ番外目当てで読み始めたのですが、それ以外の作品もとても素敵で気付いたら全部に目を通していました。「そんな夢を見ました」が特に好きです。 素敵な作品をありがとうございます、これからも応援しています。 (2019年8月25日 19時) (レス) id: c38b9cd639 (このIDを非表示/違反報告)
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