わがまま王子 06 ページ6
それからの藤ヶ谷は、
ほんとにほんとに普通で
あれ以来あんな顔しなくなって
「いつもの藤ヶ谷」だった。
あれから。
俺は
女に言い寄られても
1度たりとも抱き捨てることなんてなく
付き合うこともなかった。
でも
藤ヶ谷を揺さぶってみたくて
「今日は晩飯いらない。
朝帰ってくるから。」
何度も何度も嘘をついたけど
「承知しました。
お気を付けて、宏光様。」
普通に送り出してくれるし
あの時の表情も、見せない。
……またあの顔が見たいのに。
あの時の気持ちはなんだったんだろう。
考えることは、藤ヶ谷のことばかり。
────
「ほぇ〜ミツにバカ、ってその人すごいね」
「……るせぇ」
また藤ヶ谷に「女と遊ぶ」と嘘をついて
やってきたのはカフェ。
もちろん相手は女ではなくて
横尾さん、なんだけども。
横尾さん。は
俺の幼なじみ。
一つ下だけど
俺より大人で
俺のことをよく考えてくれる
すごく優しい人
唯一の親友だ。
「……それで、その藤ヶ谷さん?の表情だけが気になって、
あれほど女遊び激しかったみっちゃんが関係全部断ち切ったんだ。」
「みっちゃん言うなっ!」
ごめんごめん☆ってニコニコ笑う横尾さんの笑顔に俺は何度も救われてきたなぁ、と思う。
「みっちゃん。」
アイスコーヒーのストローをくるくる回す手を止める。
カランっ、と、氷が音を立てた。
「…恋、しちゃったんだ?」
「………………え?」
優しい声で横尾さんは
「その人のこと、好きになっちゃったんだね。」
ニコニコ笑って、そう言った。
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作者名:ちぇりリン | 作成日時:2017年10月15日 4時