第37話 ページ37
そっと触れる。だって壊れそうだから。
強がりで生意気で、プライドの高い、君だから。
細心の注意を払って抱きしめた肩は震えている。
あんなに、あんなに大きくて広いと思っていたのに。
腕を回してもまだ腕が余る。――――そんな、小さな女の子。
『俺の言葉がアンタに響くならなんだっていい！それでアンタを救えるなら――っ！』
どんな世界が見えているのだろう、そう思ったのはいつのことだったか。
たまたま動画サイトのおススメ欄に出てきた舞台のメイキング映像。
3分にも満たないその映像の中、君は俺の知らない世界を教えてくれた。
画面越し、機械越し。なのにやたらと近く感じる肉声のような音声。
これが舞台。これが演劇。これが――――松岡Aという役者。
心が震えた。心が奪われた。演劇なんて興味がなかったのに。
それが最初。二度目はあの人。
そうして俺は絶句する。アイツの生き写しのような、皇天馬。
すぐにわかった。何度も見直した3分の動画が全く違うものに見えた。
それはまるで、行き過ぎた憧れにも似て、そうじゃない。
――――あぁ、これは“恋”だ。
画面の向こうの少年は、焦がれるようにその舞台に立っていた。
「アンタを見てればすぐに分かる。――もう観念しなよ、A」
だから言えなかった。
いや、言わない。最後まで。
俺の友達。強くてかっこいい、そしてアイツに似て不器用な女の子。
俺にはできない。どれだけ時を超えても、生まれ変わっても。
君を慰めることはできても、その悩みの種にはなれないし
隣にいても、その鼓動を乱せはしない。
こうやって、拒まれない。
俺は、本当は、拒んでほしかった。
「天馬のこと、見くびらないで。アンタはあの頃のアンタじゃないっていうけど」
「アイツだって、…何も知らなかったあの頃のアイツじゃない」
“異性”がダメなら、
ちゃんと俺のことも拒んでよ。
「いい加減、ちゃんと俺の話聞いて。
Aの、親友の俺の話」
自分勝手に振り回されても許してあげる。
わがままだって聞いてあげる。
言えないことは、代わりに聞いてあげる。
そうしたら、大人になる。
だって俺は早く大人になりたい。――アイツに似合う、大人の男に。
それが俺だって、思うことにするから。
「『俺の言葉がアンタに響くならなんだっていい』…なら、俺は言うよ」
――――「早くヒーローの所に走りなよ、ヒロイン」
早く行きなよ――――俺の小さなヒーロー。
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春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます！タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください！ (2018年8月31日 10時) (
レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー！！！めちゃくちゃいいとこでー！！！待ってますー！！！！！ (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます！嬉しいです…！頑張ります！！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます！更新できるように頑張りますね！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
狂(プロフ) - とても引き込まれました！頑張ってください！ (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一華 顕音 | 作成日時：2017年12月7日 17時
