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一瞬世界から音が消えたのかと思った｡
その後生み出される盛大な笑い声｡
｢本っ当に何も知らねえお嬢ちゃんなんだなあ!こりゃあいい、それなら教えてやるよ｡お前の父親もたっくさんひどいことしてたんだぜ?同じファミリーだったからよく知ってんだ｡アイツはプロ級の殺し屋だった｡その腕を買ってうちのボスが引き入れたんだ｣
男の言うことを、Aは信じることができなかった｡
この最低な男が言っていることは、すべて嘘なんじゃないか｡きっとそうだ、違いない｡
そう信じこもうとしてもうまくいかない｡男の話が真実ならば、つじつまが合ってしまうことがいくつもあったのだ｡
Aの父が自分はマフィアだと母に言っていたこと｡
夜遅くに血だらけで帰ってきたこと｡
そんな父に母がもうやめて、と泣きながら抱きついていたこと｡
そして目の前にいる男と同じデザインのリングをつけていたこと｡
Aは男に敗北した｡男の言うことを事実として受け入れてしまったのである｡
｢だけどどういうことだ?せっかくアリスを捕まえてきたのに、SDカードは見つからねえし……｣
絶望の淵に立たされているAのことなどお構いなしに男は首をかしげる｡
だが男はまあいいかとのんきな声を上げると、服を漁って何かを取り出した｡
額にその何かがあてられて、顔を上げたA｡そしてヒュッと息を飲んだ｡
ぶつかっていたのは拳銃であった｡
｢もうお前に用はねえよ｣
男の表情は冷めきっていた｡先ほどまでの腹が立つ嘲笑はどこかへ消えていた｡
Aはどういうわけか落ち着いていた｡息を飲んだ後は騒ぐでもなく泣きわめくでもなく、命乞いすらしようとしない｡
｢分かってんのか?本物だぞこれ｣
｢分かってるよ｣
それを使ったらどうなるのか、だって｡
｢邪魔者は切る｡それがあなたたちの掟なんでしょ｣
いつか父が母に言っていたその言葉を、Aは口にした｡
男はハッと笑った｡
｢上等だ｣
｢だから最後に教えてよ｡なんでここまでして何かを取り返そうとしたの?｣
｢……いいぜ、どうせお前はここで死ぬんだからな｣
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年5月27日 19時
