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たった1つ｡Aが両親のもとを去る時にもらったものは、1つしかない｡
男は再びAを見下ろした｡
そしてあることに気づき、Aの首もとに手を伸ばした｡
｢おい、これはどうした?｣
ぐっと身につけていたペンダントを思いきり引っ張られる｡首にチェーンの痕が残りそうなほど強く｡
Aは痛みをこらえ言った｡
｢マ、ママ、から、もらった｣
｢へえ……｣
男が興味深そうにペンダントを見ていたかと思うと、チェーンからペンダントトップをむしりとった｡チェーンがいくつか宙を舞う｡
Aには時間が止まったようにすら思えた｡息をすることさえも忘れた｡
そこからゆっくりと時が進んでいって｡
｢いやぁぁあっ!｣
Aは何が起こったか分かるなり叫んだ｡今までの人生の中で最も大きな声だった｡
男はAを気にすることなく、ペンダントトップをいじくり回す｡
おもちゃの宝石とそれをはめこむような額縁でできているそれを、取り外すことは男にとって容易であった｡
ニヤリと笑って男はペンダントトップを2つに分けた｡
そして聞こえてきたのはやけに大きな舌打ち｡
｢何も入ってねえじゃねえか!｣
分裂させたペンダントトップを床に叩きつけると、男はそれを靴で踏みつぶした｡
もはや叫ぶ気力はAになく、ただしくしくと泣くしかなかった｡
｢どうして……｣
Aはポツリとこぼす｡イライラしている男はよく聞きとれなかったらしく、機嫌悪げに聞き返した｡
｢どうして、こんなひどいことできるの……?｣
泣きながらAは男を見る｡泣いていても、しっかりと彼女は男をにらんでいた｡
｢どうしてって……｣
男はキョトンとした顔をAに向けた｡
｢俺がマフィアだからだよ｣
｢……は?｣
Aはますます意味が分からない｡
マフィアだから、こんなにひどいことができる｡
そう言われても、はいそうですかと頷けるわけがない｡
しかしAは何よりも気になったことを呟いてしまった｡
｢パパも、こんなにひどいことしてたってこと……?｣
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年5月27日 19時
