アリス、たわむれる 01 ページ20
万年筆が紙の音を滑る音が部屋に静かに響く｡
｢ふう……｣
ツナが息を吐いてぐぐっと体を伸ばす｡
そのタイミングを見計らったかのようにノックが聞こえた｡
｢10代目｡そろそろ休憩にしませんか?｣
コーヒーとおやつを持って、獄寺が部屋に入ってきた｡
｢そうだね、キリのいいところまで終わったし｣
獄寺は軽く部屋を見回した｡
｢Aはまだ戻らないんですか｣
｢うん｡相当楽しいみたいだね｣
2人して窓の方に視線を飛ばしてしまって、思わず苦笑いをこぼす｡
ツナがソファーに腰かけコーヒーをすする｡
そして何か思い出したらしく、ツナは机からパソコンを持ってきた｡
｢ちょっと獄寺くんに見てほしいものがあるんだ｡いいかな?｣
｢ええ、もちろん｣
ツナが見えやすい位置に置いたパソコンにそのデータを映し出すと、獄寺は困惑した顔をツナに向けた｡
｢10代目、どこでこれを?｣
｢実は｣
返ってきた答えに獄寺は目をかっ開いた｡
｢待て待てー!｣
｢きゃー!｣
｢鬼がくるー!｣
Aは鬼ごっこの真っ最中であった｡
たまたま遊びにきたランボと本日非番の山本と｡ちなみに鬼は山本｡
Aは意外とすぐにランボに馴染んだ｡歳が最も近いからか、ほとんど抵抗がなかった｡
ランボも初めての年下ということで、Aを子分だと思って可愛がっているようだ｡
｢ランボ、捕まえた!｣
｢ランボ兄ちゃん!｣
山本もだいぶ手加減してくれていた｡しかしいつまでも走りっぱなしでは大変だと思ったようで、とうとう近くにいたランボにタッチした｡
｢くっそー!｣
悔しそうに地団駄を踏むランボを見て山本は爽やかに笑っていた｡
｢一旦休憩にしようぜ｣
山本にそう言われ、ランボとAは惜しみながらも頷き水分補給をすることにした｡
ゴクゴクという音を立てながら勢いよく山本とランボが水を飲む｡
Aもそうしたかったがむせてしまったので、ちびちびとペットボトルに入った水を体に流しこんだ｡
3人分のペットボトルを持たせてくれたのは獄寺だった｡脱水症にでもなったらどうすんだ!とちょっと怒り気味に渡された｡
ぷはーっ!とまるでCMの役者みたいにランボはペットボトルを飲み干した｡
｢ランボ兄ちゃん、もう飲んじゃったの?｣
｢だって喉渇いたんだもん｡A、もう飲まないなら俺にそれちょーだい!｣
｢だ、だめ｡まだ飲む｣
焦ったようにAは再び中身を飲み始めた｡
ちぇー、と言ってランボは足元の土をぐるぐるといじり出した｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年5月27日 19時
