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｢何で嫌なんだ?｣
獄寺は気にとめなかったように振るまいながらAに尋ねた｡
｢……さぷらいず、したくて｣
｢サプライズ?｣
獄寺が聞き返すと、Aは頷いた｡
｢ツナさんには内緒で練習して、ひらがな書けるようになったよって言いたいの｣
Aは楽しそうにサプライズの内容を語る｡
獄寺はそんなAを見て事実を言うか言うまいか悩んだ｡ツナのことだ、このことを伝えたら口裏を合わせて驚いたふりをしてくれるだろう｡
｢あのな、A｡このドリルを用意してくれたのは10代目なんだ｣
｢えっ｣
｢お前がひらがなを読めないって俺に教えてくれたのも10代目だ｡だからサプライズにはならない｣
獄寺はツナの気持ちを無駄にしたくなかった｡ここでAに何も言わなかったら、Aは獄寺がドリルを用意してくれたと勘違いしたままだろう｡それは避けたかった｡
｢そっかあ……｣
悲しそうに目を伏せるAに獄寺はなぜか罪悪感を感じていた｡獄寺が悪い訳ではないのだが……｡
｢取りあえず"の"まで書いたら今日は終わりな｣
｢うん……｣
シュンとしたままAは"の"を書き連ねていく｡
｢全部ひらがな書けるようになったら、10代目に手紙でも書けばいいだろ｣
あと1つで終わりというところで、Aは顔を上げた｡目をキラキラと輝かせて｡
｢獄寺さん｣
｢なんだよ｣
｢全然思いつかなかった｡ありがとうございます!｣
獄寺は照れ隠しのつもりなのかそっぽを向いて言った｡
｢分かったから早くそこまで書け｣
｢はーい｣
Aはカリカリと最後のマスに"の"を書き入れた｡
翌日からツナの仕事部屋でドリルを進めるAがしばしば目撃された｡
残念ながら1週間ですべてのドリルを終えることはできなかったが、ひらがな自体は全部書けるようになった｡残りのドリルはAが1人で黙々と進めていた｡分からないところが獄寺の仕事の合間に聞きにいって解決しているらしい｡獄寺も心なしか表情が柔らかかった｡
その様子を見た山本や笹川は微笑ましく思いつつ、無理して勉強することはないとAに伝えた｡Aの性格上、そうする可能性も十分考えられたからだ｡
しかしAは笑顔で横に首を振り言うのだ｡
｢お勉強楽しいから!｣
リボーンはこれを聞いてニヤリと笑うと、ツナの方を見て言った｡
｢昔のツナに聞かせてやりてえもんだな｣
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年5月27日 19時
