02 ページ12
｢今日はそろそろ上がろうか｣
ツナがぐぐっと伸びてAたちに声をかけた｡
あっという間に終業の時間｡
最近は平和なため、必然的にデスクワークが増えた｡そのためか、時間通りに仕事が終わることも多くなっていた｡
｢今週は……獄寺くんが担当だね｣
獄寺はドキリとした｡
まだまだAに警戒されているようなのに、今日から1週間も無事に過ごせるのだろうか｡
そんな獄寺らしからぬ考えが彼の頭をよぎったからだ｡
｢よろしくお願いします、獄寺さん｣
Aがそう言って頭を下げた｡
取りあえず獄寺を嫌がっている様子はない｡
獄寺は自分がAに振り回されていることに気づかない｡ひとまずホッとしていた｡
｢行くぞ｣
｢はい｣
｢あ、ちょっと待って獄寺くん｣
ツナに呼び止められ、獄寺は振り返る｡
手招きされてそちらに行くと、ツナが獄寺に耳打ちした｡Aは首をかしげて彼らを見る｡
獄寺が眉を軽く上げツナに聞き返したが、その声も小さくてAまで届かなかった｡
やがてツナが獄寺に頼みこむように手を合わせた｡獄寺は慌てながら、何やら仕事を受けたようだ｡
｢じゃあ、よろしくね｣
｢了解しました｣
そう言葉を交わして今度こそ廊下の方へ歩き出した獄寺を追いながら、Aはツナの方を振り返った｡
ツナはひらひらとAに手を振ってくれていた｡
応えるようにAも小さく手を振り、獄寺の後をついていくのだった｡
｢獄寺さん、待って｣
Aの声で獄寺は立ち止まった｡
後ろを見ると、少し離れた所からAがパタパタと駆け足で向かってくる｡
｢ごめんなさい、遅くて｣
追いついてからAは獄寺に謝った｡
そのことに獄寺が驚いていた｡
こいつ、7歳だよな?アホ牛が同じ歳の時なんか速いだなんだって文句言ってたぞ……｡
獄寺は結局何も言わずに再び歩き出した｡だが、今度はスピードを落として歩いた｡
Aもそのことに気づき、嬉しくなっていた｡
獄寺さんって怖いのかと思ってたけど、そうじゃないのかも｡
そんな風に思いながら、ゆっくりと進んでいった｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年5月27日 19時
