訶遇突智【血界戦線】 (ページ2)

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訶遇突智ページ2

そこからの日は、まあ一言で言えば地獄のような毎日だった。
谷から突き落とされたり、身一つで猛獣と戦わされたり。
まあ師匠は世捨て人だったから、こういうことがあって然るべきかな、なんて呑気に思っていた。
師匠は女がここまでついてくるとは思ってなかったらしいけど、ついてこられるならって普通に接してくれた。ありがたい。
そんなこんな、気づけば私がここに来てから十年がたった。一度師匠に欲しいものを聞かれたけど、忙しない毎日だし、特に思い付かなかったから断った。ていうか師匠が妙に優しくて怖かった。
でも師匠、最高のプレゼントを用意してくれた。

『おい』
「あ、師匠。どうしたの」
『お前の名前だ』
「……なまえ？」
『ああ、そうだ。ザップ･レンフロ。これからは外でそう名乗るといい』
「ザップ………師匠、ありがと」

そうだった。名前がまだ無かったんだ。この時初めて、自分が世界に受け入れられた気がした。

『そして、お前に外で名乗る名前を与えたということは、お前を外に出すと決めたということだ。いいな』
「…！」

外に出す。つまり、牙狩りとして吸血鬼と戦うということ。下手を打てば死ぬかもしれない。
けど、それは師匠が私なら戦えると分かったから。無茶な人だけど、人の能力を見るのに長けているから、どのくらいのレベルなら戦えるか分かってる。
師匠が少しでも認めてくれた。

「師匠、私戦うよ。牙狩りになって」
『ああ、行ってこい。我が一番弟子』