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妖艶な男と、哀れな女 コロラチュラさんリク カーズ ページ41

「触らせてやる」

彼の大きな手が私の手首を掴み、その逞しい胸板へ導いた。

鼓動は落ち着いたリズムで繰り返され、私の高鳴る胸とは対照的だった。


「ッ、カーズ…」

「最初、私の元へ来たのはお前だろう?後はお前が好きにすれば良い」


ニィ、と意地悪な笑みを浮かべるカーズはどこまでも妖艶だった。


「あ、あれは…」

「まさか、嘘とは言うまい?」


そう言われては押し黙る他ない。

最初に彼に近づいたのは私だ。そのあまりに荘厳で艶やかな姿を間近で見たくて。

どうせ相手にされない。私のようなちっぽけな娘なんて。そう思ってたのに。

それはあろうことか己から近付いてきたのだ。

私にはもう、どうしたら良いのかわからない。

己の愚かさを今更悔いたって遅すぎる。


言われるがまま、指先で胸板、割れた腹筋をなぞる。

その間もカーズは楽しそうにそれでいて威圧的な笑みを浮かべていた。

背を流れる汗がこんなにも冷たいのは初めてだ。


「ほら、どうした」


形の良い唇から、真っ赤な舌が覗く。ペロリ、と下唇を滑る。

その瞬間…頬が熱くなり息が苦しくなった。

いつかどこかで聞いた。「獲物の前で舌なめずりをする奴は三流」だと。

でも……この男は違う。間違いなく、全ての頂点に立つ存在。


震えながら、太い首に浮かぶ筋を指でなぞった時。


「ッ…!」


ブルリ、とその巨体が震えた。

驚いて思わず手を離した。

見上げた顔は微かに紅潮して、宝石のような双眸は欲に燃えている。


「…いいぞ、もっとだ」

「あっ…!?」


急に腕を引かれ、カーズの胸に倒れこむ。

カーズは私を抱きしめたまま後ろに倒れた。

私が起き上がろうとしても彼は私の手を握りそれを阻む。


「…!」


今の体制に気が付いた。

これじゃあまるで、私が彼を押し倒しているようじゃないか。


「さぁ、このカーズをもっと楽しませてみろ」


私の影が重なる男の顔。

今宵一番楽しそうな、セクシーで有無を言わせぬ笑顔。

その目に映る私の顔は最早哀れな犬か。

だから私は、


「…はい」


そう返事をして、その身体を味わい尽くす他になかった。


甘い蜜に溺れてゆくような、そんな心地がした。

より豊かな表情、より豊かな人生 歩さんリク ブラックモア→←もう弟ではない みくさんリク ワムウ



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ウィルゴ・パルテノス - リクでダービー兄弟と一緒に日本の駄菓子を食べてみたをお願いします (2022年8月16日 7時) (レス) id: b628f3ea92 (このIDを非表示/違反報告)
ヒヨコダイル - 15さん» コメントありがとうございます。浮上もできない半端な者ですがもう少しだけ頑張るつもりです。 (2020年9月18日 16時) (レス) id: eaa08fab16 (このIDを非表示/違反報告)
ヒヨコダイル - みかんじゅうすさん» 更新はするつもりです。ですが、度重なる体調不良と将来の進路に関する活動を含む学生生活が忙しくてなかなか趣味としてPCに向かえない日々が続いております。決して投げ出したわけではございません。誠に申し訳ございません。もうしばしお待ちください。 (2020年9月18日 16時) (レス) id: eaa08fab16 (このIDを非表示/違反報告)
みかんじゅうす - もう更新されないんですか? (2020年9月16日 23時) (レス) id: 33585c80db (このIDを非表示/違反報告)
15 - 神よ! (2020年8月15日 22時) (レス) id: 33585c80db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヒヨコダイル | 作成日時:2018年9月17日 21時

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