【カゲプロ】Idle gossip (ページ10)

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12月23日 PM12:34_ ページ10

クロハside

今日はこの間のマフラーが欠陥品であった為、在庫を受け取りにまたもや女王と出かけていた。
俺は基本スマホの電源は入れていないし、入れていてもマナーモードだ。ニンゲンのように、常に誰かと繋がっていたいなんて思わないからだ。
斜め前を見ると歩きながら友達へlineをする少女が、向こうの壁に凭れかかってスマホを弄る男性は必死にTwitterで自分の趣味について講じている。
あぁ、どうしてそんなにも他人といつでも繋がりたいのだろうか。脆くてちゃちな人間関係に縋る姿は酷く滑稽で、笑いを堪えるために、愛用の黒いネックウォーマーに口を埋めた。
すると電源を切っていた筈のスマホがダッフルコートの左ポケットで暴れだした。何故かと気になったが答えはすぐに出た。
｢エネじゃねーか。｣
｢ニセモノさん、こんにちはです。本当はお会いしたくなかったんですけどねぇ、ご主人の指示ですから。｣
｢へぇ、えらく従順だな。｣
｢まぁ、あの人、危なっかしいから。｣
あぁ、こいつが榎本貴音という実体があった頃の口調に戻るのは大抵感傷に浸っている時だ。感情が欠落していた筈の俺の胸が軋んだ。
｢へぇ、そうなのか。で、何の用だ？｣
｢あ、忘れてました！今から言う事をよく聞いてください！｣
そこで告げられたのは余りにも悲惨な出来事だった。
隣の女王の手が小刻みに震えている。
｢ふっざけんな、誰がそんなことを…！｣
｢わかりません、でも、犯人を探すためにも取り敢えず逃げて団のみなさんで合流する必要があります。そのためには遥の能力が必要です。ニセモノさん、すみませんが、遥と代わって。｣
苛立ちがこみ上げる。俺じゃ役不足なのか？そこで、俺は気づいた。いつの間に俺はこんなにも仲間に執着していたのだろうか。いつもなら、はいはいと代わるところだ。あぁ、俺には感情が芽生えていたのか。そして、こいつらといることが心地よいと思っていたのか。皮肉なもんだ。殺そうとしていた人達に愛情が湧いて、自分自身の生にも執着するようになったのだ。恐らく最善策と女王の影響だろう。だったらそいつらを守るためならなんだってしてやる。
｢コノハ代わるぞ。｣
そう呟くと俺は意識を飛ばした。