【カゲプロ】Idle gossip (ページ20)

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12月23日 PM5:30_ ページ20

コノハside

『おい、コノハ。』
｢んー、なに？｣
解散した後、庭に出ると頭の中で声が響いた。随分と憤っているのは先ほどの件だろう。

｢後は了承を取っていないのはクロハか…。コノハ、クロハに代わってもらうことはできるか？｣
｢ごめん、キド。今はいないみたい。｣
｢いや、大丈夫だ。｣

クロハの印象は、あの日が終わりメカクシ団に住むことになったあとも払拭されなかった。それも当たり前だ。大事な人を殺された恨みはそう簡単になくなる物じゃない。例え生き返ったとしても。
『俺はあの場に出れたはずだ。なんで嘘をついた？』
｢君が出ると分が悪いから。だって僕の考えを全部知ってるもんね。｣
『ふざけるな、どうせお前のことだ、メカクシ団の奴らを完全に信じたワケじゃないんだろう？』
｢そりゃ勿論。僕の目的は貴音を守ることだから。｣
そう言うと、はっとクロハは笑った。如何にも可笑しくて堪らないとでも言いたげな笑い声が頭に響く。
｢あぁ、君には愛するとか守りたいとか理解できないよね。｣
『あぁ、確かに理解できない。俺に理解できるのは、今のお前は何処ぞの女王と一緒だってことぐらいだ。』
マリーのお祖母さんと僕が一緒なんてありえない。いや、そうであってはならない。僕が貴音を傷つけた奴と一緒であってはならないんだ。
『だってそうだろう？アイツの感情も知らないで』
｢黙れ｣
『貴音のため、貴音のためってほざいて。』
｢黙れ｣
『結局のところ昔アイツを守れなかった自分の後悔を払拭したいだけじゃねぇか。』
｢黙れっ！！！｣
頭を押さえつけて蹲った。頭の中で会話をしていたはずがいつの間にか声となって漏れていて、無様な僕の声が木々の間で響いた。
｢遥、何やってんの？｣
いつの間にか隣にはシンタローと貴音がいた。ディスプレイに映る彼女は心配そうな顔をしていた。
｢またアイツになんか言われたのっ！？｣
｢なんでもないよ…貴音。だからお願い。｣
無様な僕を叱って。そう呟いて三角座りをした足の隙間に顔をうずめた。
いつの間にかシンタローは貴音がいるスマホを残していなくなっていて、頭の中のクロハの気配は消えていた。
｢アンタが無様なのはいつもじゃない。早く私を頼ってよ。抱え込まなくていいからさ、遥。｣
｢…ありがとう、貴音。｣
スマホの彼女と手を合わせた。外気でひんやりとしている筈なのに、どこか温かく心地よい。
そのまま僕らは語らっていた。

クロハが去り際に告げた言葉は聞こえないふりをした。