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12月(続き) ページ10

人生ゲームもひと段落したころ、




誰もがチャンネル合戦のことなど忘れて盛り上がっていた。




「今度はトランプでもしよう!!」




爺さんが、酔っぱらった顔でトランプを開け始めた。




親戚の大人げない大人たちが、わいわいと騒ぐ。




姉さんは騒ぎから外れて、庭に出ようとしていた。




誰も気づいていない。




僕も、姉さんに続いて庭に出る。




家の中の熱さと一変、外は寒かった。




「ありゃ、人見知り息子は遊ばないの?」




ビールを飲んだのか、ほろ酔い状態の姉さん。




「僕あーいうのは苦手なんだよ。」




「へー、昔はよくやってたくせに。」




姉さんが膝を丸めてその中に顔をうずめた。




「・・・・変わったね。」




いつもの強気で明るい姉さんからじゃ想像できないか細い声に、僕は戸惑う。




「母さんが死んでから、変わった。」




「あまり笑わなくなったし、何もしようとしなくなった。」




僕は姉さんの隣に座った。




「ねぇ、姉さん。」




「母さんだってば。」




「僕の母さんは一人だよ。姉さんは、姉さん。僕の姉さんは隣にいるあなたしかいない。」




姉さんは何も喋らなくなった。




「なぁ、姉さん。叔母さんから聞いたよ。叔母さんが僕を引き取ろうとしたのを、断ったんだって?」




「・・・・息子の、弟の、ためを思ってやったの。あの人の、お姉さんのところに行かせるだなんて、私には出来なかった。」




姉さんは顔を上げた。




何を考えているんだろう。




姉さんは僕の事をよくわかっている。




でも、僕は姉さんの事を何も知らない。




今、姉さんが何を考えて、何を思って、どういう気持ちなのか。




「・・・・それは、建前だったのかも。」




姉さんがぽつりとつぶやいた。




「どこにも、行ってほしくなかった。」




12時を知らせる鐘が鳴った。




姉さんと過ごす最後の一年は、もう終わった。






 







 









姉さんが死ぬまであと4ヶ月

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設定タグ:感動 , 姉弟   
作品ジャンル:泣ける話, オリジナル作品
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獣嚶(プロフ) - もう…文才というか…何というか…情景がすぐ頭に浮かんで来るような、素敵な作品でした!あれ…?目から汗が… (2020年6月7日 17時) (レス) id: 258d7d697d (このIDを非表示/違反報告)
紗奈# - すごく心が動きました。弟とお姉さんの関係がすごくいきいきしていて、素敵です。素晴らしい作品をありがとうございました。別作品も読ませていただきます! (2020年6月7日 16時) (レス) id: 5b3e3a5457 (このIDを非表示/違反報告)
本の虫(プロフ) - 翡翠琥珀@サブさん» うわ〜!とても嬉しいです。。伝わってます、嬉しいくらい伝わってます!もう、キスしていいですか?(殴)すみません、ありがとうございます!!!! (2020年4月27日 10時) (レス) id: 0e28084fa3 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠琥珀@サブ - うわ〜、読み終わったあとの何とも言えない感じがやばい。めっちゃ感動しました。もう、なんか、あの…感動しました。(語彙力ぜろでごめんなさい笑)切ないよ〜ってなってます。はい。最高でした。 (2020年4月27日 2時) (レス) id: 387b2ce801 (このIDを非表示/違反報告)
本の虫(プロフ) - 蒼炎さん» 一番!?!?(!?!?)やった!!(笑)すみません、ありがとうございます!! (2020年4月26日 21時) (レス) id: 0e28084fa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:本の虫 | 作成日時:2020年3月10日 17時

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