標的199 「徹夜して行く」 ページ7
結局、一睡もしないまま外が明るくなってしまった。
遠い過去の忘れてしまっていた約束のお兄ちゃんは俺が強くなることに初めて意味と希望を持ったきっかけで、逆になんで今の今まで忘れていたか不思議なほどだ。
俺が今できること、俺が今までどういう経緯でこういう立場になったのか、ここに来るまで何をしていたのかを喋り倒した。ボスも相槌を打ちながら、時に短い言葉でだが質問を投げてくれて、全然喋る事がなくならない。
「くぁ……」
『あ、さすがに眠いですよね』
「問題ない」
『いやぁ……なんかすんません』
「問題ねえと言ってるだろうが」
謝罪の言葉もきつめに返されたが、今となってはまったくビビらない。むしろ笑顔です。
ごちゃごちゃ悩んでいたのも馬鹿らしい。
ソファを立ち上がって少し眠そうなボスの横まで歩み出て、もう一度傷に左手を当てた。
ボウッっと白い炎を再び左手に灯す。
『……本当に痛くないんですか?』
「あぁ」
『ホントのホントに?』
「しつけぇ」
うっとおしそうな顔で言いながらも左手を振り払わないボスに、思わず笑みがこぼれた。
ボスの背後の窓、森の木々から朝陽が顔を覗かせ、ボスを光で包んだ。その光は、俺の炎のように、真っ白だった。
午前九時、談話室でルッスーリアに昨日のことを話し終えた俺は、ふいーっとソファの背もたれに体重を預けた。うきうきと廊下を歩いていれば引っ捕まえられ、何かいいことあったんでしょ?教えなさいと連行された。なんでわかったのかと聞けば、「女のカン」とのこと。女の………カン。……女の……。
とにかく、ボスと実は過去に出会っていたことと成り行きを説明した。ニコニコ聞いていたルッスーリアがパチン、と両手を合わせた。
「んまぁ〜!素敵な話ねぇ!!」
「ししっ、だーからボスは天使はいるって言って譲らなかったんだな」
「スクアーロと大喧嘩だったもんね。毛根大丈夫?」
「あ、後頭部ハゲてんぜ」
「ゔぉぉぉい!嘘ぶっこいてんじゃねえ!!」
マーモンの心配に乗っかって冗談を言ったベルに、スクアーロのツッコミなんですかそれと逆にツッコミたくなる威力の攻撃が入った。いや、もう攻撃って言っちゃった。
つか、気づいたらこの人数。無言ではあるけどレヴィさんもいる。集まってきちゃったんだなあ。
『あのさ、レヴィさんのあれは怒ってるんで?』
「あ゛ぁ?これはだな……おいレヴィ!」
右隣にいたスクアーロが声をかければ、レヴィは難しい顔のままこちらを向いた。
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りお(プロフ) - こんばんは、いきなりのごめんと失礼致します!とっても面白かったです、作者様のこの作品を見つけて一気読みしてしまいました!こんな素敵な作品ありがとうございます。次の更新も楽しみにしております! (2021年6月30日 23時) (レス) id: 02a06a9e06 (このIDを非表示/違反報告)
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