標的198 「ハリセンボンで脅されて行く」 ページ6
かっ消される十秒前。
捕まった右手はそのままにワタワタと焦るしかやることがない。
赤い双眼に射抜かれ、本当に蛇に睨まれた蛙。げ、ゲコォ。
「おいドカス」
『はっ、はいぃっ！』
「目はどうした」
『は！？』
「忘れてんならいいと思ってたがこの際だ、はっきりしようじゃねえか」
『ちょ、ボス！意味わかんないですから……あっつ！！』
文句は受け付けねえとでもいうように手首を握る掌に炎を灯したザンザス。
慌てて自分の腕にも白い炎を灯す。立ち上るオレンジと白い炎が混ざり合った。
あれ……？
「ズカズカと土足で人のテリトリーに入り込みやがって」
『は？』
「ガキの約束守るのにどれだけ手間かけさせるつもりだ」
『ボス……？』
「何も変わらねえお人好しのガキが」
『い、意外と喋るんですね』
不機嫌そうに言葉を紡ぐ裏に、何か懐かしさをにじませるザンザス。もう何が何だかわからない。それにさっきから何かが引っかかる。オレンジと白……赤い目。
「まだ思い出さねえのか」
『思い出す？』
「嘘ついたら針千本……テメェが飲むか、あぁ？」
口端を上げながら俺の手首をつかんでいる手を離し、俺の小指に自分の小指を絡めたザンザス。オレンジと白が混ざる炎。絡めた小指、赤い目。そこで漸く、漸く思い出した。
どうして忘れていたんだろう。初めて自分の能力で誰かを癒した日。初めて自分の能力で仲間ができると思った日。初めて自分が、他人と共にあれるかもしれないと希望を抱いた日。
初めて自分が、誰かと未来の約束をした日。
「はっ、なに泣いてやがる」
『なんで…最初に言わなかったんですか』
「俺の勝手だ」
『俺、強くなってますか？』
「迎えに行こうと思う程度にはな」
乱暴に俺の涙を拭った暴君は、困ったように眉根を下げた。
『ししょー！』
〈どこ行ってたんだやんちゃガールめ〉
『あのね、あのね！能力できた！お兄ちゃんの傷なおした！！』
〈はぁ！？おま、羽出した！？名前名乗っちゃった！？何もされなかった！？〉
『出しちゃった、名前は言い忘れた、強くなったら僕を迎えに来てくれるって！仲間にしてくれるって指切りしてくれた！』
〈……そっか〉
『お兄ちゃんも炎出せたの！僕のと交じってきれいだったんだよ！ししょーにも見せたかった！』
〈そっか〉
『ししょーも話聞いてない！』
〈聞いてるよ〉
『僕、絶対強くなる！お兄ちゃんに迎え来てもらう！』
初めて人を癒した少女。
彼女の人生を作った、忘れていた小さな約束。
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りお(プロフ) - こんばんは、いきなりのごめんと失礼致します！とっても面白かったです、作者様のこの作品を見つけて一気読みしてしまいました！こんな素敵な作品ありがとうございます。次の更新も楽しみにしております！ (2021年6月30日 23時) (
レス) id: 02a06a9e06 (このIDを非表示/違反報告)
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