八百十八話目 「耐え性がないのはいつものことで」 ページ22
『じゃあ、それで。我儘やってすまん』
「いえ。では早速航路を変更します」
『頼む』
航海士に相談して船の進路を回れ右。再びアラバスタの方角へと向かい始める。
表向きにはクロコダイルが渡しそびれたモノがあったって体にさせてもらった。クロコダイル本人には根回し済み。
拳を握って水平線に沈んでいく夕日を睨んだ。
『………ッ、ルッチさん！？』
夜半、ルッチさんにベッドを明け渡し俺はソファで眠っていたがくぐもったうめき声でパチリと目を覚ました。
明かりをつけてベッドに駆けよれば体を丸めて唸っているルッチさんが目に入る。
「ッ……うぐッ………ハッ、ハッ……」
『鎮痛剤をッ』
机の上に置かれた鎮痛剤の瓶を取りに行こうとしたが、服の裾を引っ張られる。
そういえばこの人、その手の薬効きにくいって言ってたっけ。
この状況でもしっかりしているルッチさんに改めて感心したがそんな場合ではない。
『ルッチさん、ちょっとすみません………あっつ』
額に触れれば驚くほど体温が高い。
汗も尋常じゃない量で、呼吸も荒い。
………ネコだともって五日。人間への感染は事例がない。
それは、五日よりも猶予があるかもしれないが……裏を返せば。
ぞわっと背中に寒気が走った。あと、五日もないうちに目の前のこの人が死ぬかもしれない。その恐怖がじわじわと俺の心臓を侵食して行く。
『ルッチさん……』
返事がない。顔をゆがませて、荒い息を繰り返すので精一杯のようだ。
丸くなって苦しんでいる彼を思わず抱きしめた。嫌だ、嫌だ、嫌だ。
苦しくて痛いのはルッチさんの筈なのに、俺の目から涙がこぼれる。情けない、俺が泣いてどうするんだ。ルッチさんが聞こえていないであろうことをいいことに、願うように呟く。
『嫌だ……俺を、置いてかないで……ルッチさん』
声がした。
祈るような声が。
俺だって好きでこうなったわけではないというのに。
力が入らない腕では、縁起でもないことを呟くバカヤロウすら殴れない。
まったくもって忌々しい。
『ルッチさん……』
聞こえている。
少し、眠らせろ。
俺が騒いだお陰で船医がすっ飛んできた。
急に開いた扉に驚きながらも状況を説明している。船医がルッチさんの容体を調べている間に、俺は水を飲んだ。嫌に喉が渇く。
「………意識がほとんどない状態ですね」
『………なあ。そのドラム王国ってところのエターナルポース、あるって言ってたよな』
「は、はい」
『俺、四日も待てねえわ』
八百十九話目 「意識を飛ばせど意地は捨てず」→←八百十七話目 「我儘放題、やりたい放題」
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夜月レナ(プロフ) - はじめまして(*^-^*)すごく楽しんでに読ませてもらってます（語彙力orz） 更新頑張って下さい(’-’*)♪ (2019年9月6日 21時) (
レス) id: 1844904407 (このIDを非表示/違反報告)
sile - いや最高すぎません？？めちゃくそルッチさん好みにどストライクなんですが。ルッチさんオチだといいなと思ってます(してほしい)ゆっくりで構わないので更新頑張ってください！お体には十分気を使った上でですよ…？w (2019年8月18日 0時) (レス) id: 801c11ec84 (このIDを非表示/違反報告)
リリ - 最高です。これからも応援してます。 (2019年8月13日 1時) (レス) id: 199549db1c (このIDを非表示/違反報告)
レン - ウォォォォォォォォオ！！！！！！！メッチャ面白かった！！！さっっっっっっっいこっう (2019年7月18日 6時) (レス) id: dc4a31061c (このIDを非表示/違反報告)
シスター - 初めまして。シスターと申します。最初の作品から見させて頂きましたが、良い展開になって来ましたね！次が更新されるのが楽しみ過ぎて眠れないですwオチはルッチさんですかね？私の推しなので嬉しいです！ (2019年6月11日 11時) (レス) id: be6a289acb (このIDを非表示/違反報告)
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