八百十七話目 「我儘放題、やりたい放題」 ページ21
さて、どうするか。
ルッチさんが横になっているベッドの端の方に座り、苦しそうな寝顔を眺める。
『………ルッチさん。ネコなばっかりに死ぬんですね』
「勝手に、殺すな」
『あ、起きてた』
力なく近い方の手で叩かれる。
本当に、力なく。
『ねえ、ルッチさん』
「………なんだ」
『…………』
「余計なことは考えるな……任務をさっさと、終わらせろ」
『……でも』
ルッチさんの手が俺の手の上に重ねられる。普段は低い体温が俺よりも高い。
その事に驚いた瞬間にぴりっとした痛み。いや、爪立てんなよネコかよ。
「……わかったな」
『………はい』
「ん」
『俺、外行ってるんで寝ててください。気配があっちゃ寝れないでしょ』
銀を肩に乗せて立ちあがる。
おやすみなさいと残して部屋を出た。そのまま船医室へ向かって歩き出す。
室内に入れば、難しい顔をした船医と目があった。来るとは分かっていたのだろう、丸椅子へ座るように促される。
「すみません、船医のくせに。いいわけではないですが専門外なので……」
『いや、仕方ねえと思う……こればっかりは』
「………五日です。ネコだと。人は……どう転ぶか知りませんが」
『……今日を除けばあと四日』
アラバスタまで戻るにしても船では三日かかる。それに、アラバスタに薬があるとは限らない。医療が進んだ国に行かないことには薬がある可能性も少ないのだ。
クソがと吐き捨てて頭を掻きむしれば……意を決したように船医が言う。
「船を戻しませんか?」
『……アテがあんのか?』
「ドラム王国という医療が発達した国がアラバスタの近海にあります」
『何日かかる?』
「恐らくは、四日」
『チッ、イチかバチかってとこか』
万が一間に合ったとしても、そこに薬を所持している医者がいるとは限らない。
だがこのグランドライン、あらゆる島に医者はいるであろうが、名医やら医療が発達している島にたまたま出くわす方が稀。
ならば、取る選択肢は少しでも確立が高い方だろう。
『ハンコックには俺が頭下げる。癪だけど、ドフラミンゴにも……船を戻すように伝えてくるわ』
「……本部に連絡は」
『俺の独断って事で』
「承知しました」
元より自分勝手にしていいって約束でこの組織に入ったのだ。このくらい我儘にもはいらねえだろ。それに、よくよく考えれば今の俺はルッチさんよりも上司だ。俺の方がお偉いさんなのである。どうだ凄いだろう、えっへん!!
『さて、伝えに行きますかね』
船医室を出た。迷いはない。
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夜月レナ(プロフ) - はじめまして(*^-^*)すごく楽しんでに読ませてもらってます(語彙力orz) 更新頑張って下さい(’-’*)♪ (2019年9月6日 21時) (レス) id: 1844904407 (このIDを非表示/違反報告)
sile - いや最高すぎません??めちゃくそルッチさん好みにどストライクなんですが。ルッチさんオチだといいなと思ってます(してほしい)ゆっくりで構わないので更新頑張ってください!お体には十分気を使った上でですよ…?w (2019年8月18日 0時) (レス) id: 801c11ec84 (このIDを非表示/違反報告)
リリ - 最高です。これからも応援してます。 (2019年8月13日 1時) (レス) id: 199549db1c (このIDを非表示/違反報告)
レン - ウォォォォォォォォオ!!!!!!!メッチャ面白かった!!!さっっっっっっっいこっう (2019年7月18日 6時) (レス) id: dc4a31061c (このIDを非表示/違反報告)
シスター - 初めまして。シスターと申します。最初の作品から見させて頂きましたが、良い展開になって来ましたね!次が更新されるのが楽しみ過ぎて眠れないですwオチはルッチさんですかね?私の推しなので嬉しいです! (2019年6月11日 11時) (レス) id: be6a289acb (このIDを非表示/違反報告)
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