八百十四話目 「絡まるそれはココアより」 ページ18
「……相も変わらずか」
胸を貸したのはいいが、あの後無言で俺に抱き着いたまま寝やがった。
ココアも冷えてしまっているがまだ四分の一ほど残っている。
胸のあたりの服が結構濡れてしまって気持ち悪いが貸すと言った手前文句は言えない。言ってもいいが確実に拗ねらる。いや、俺には微塵も関係ないが。
「はぁ……運ぶか」
馬鹿を抱き上げてベッドへ向かう。毎度毎度思うが見かけによらず重い。馬鹿ごとベッドに横になると小さく呻いた。少し雑に扱った自覚はある。が、反省もしていなければ後悔もしていないし、なんならこれを壊れ物よろしく丁寧に扱う道理もない。
強く握られたままの俺の服。力を入れすぎて白くなっている十本の指を俺の手で撫でると奴は少し指の力を抜いた。そのまま絡め取り、両の掌で握る。
「握りしめるな。俺が寝にくい」
文句を言うように声を漏らせば寝息を立てながら眉を寄せたアホ面に小さく笑って目を閉じた。
目を開ければまだ窓の外は暗く、ベッドの横にある間接照明代わりのランタンの火がゆれていた。もうじき消えそうなくらいの火の小ささだけど、周囲はうかがえる。
いや、CP9という集団とつるむようになって、ますます夜目が効くようになった。
だから隣の男が眠っているのも、自分の十指が男のそれに絡め取られているのも割とはっきり見えてしまうのだ。きっと、ランタンが消えてしまっても。
キュウッと指に力を入れる、緩める、また入れる。にぎにぎと何気なく遊んでからルッチさんに擦り寄った。あったけえ。
「……俺の指で遊ぶな」
『うげ、起きてたんですか』
「今起きた。人の安眠を妨害するな」
『してないですよ』
「遊んでただろうが」
『いや……まあ………すんません』
謝ればキュっとルッチさんの指に力が入った。
意外過ぎて若干びっくりだ。その顔で見上げればルッチさんと視線がかち合う。俺以上に夜目が効くだろうこの人のことなので、俺の間抜け面はしっかり見えているはずだ。
するりと片手の絡まった指が解ける。「あ」と声を漏らせばさっきまで俺の指と引っ付いていたその指で顔にかかった前髪を払われた。
「寝るぞ」
『は……い』
首の下にできた隙間に腕を差し入れられる。片方の手はつないだままだ。
甘やか……されているのだろうか。酒でも飲んだのか？いつものルッチさんと同じ……筈だ。だが声と空気はドロドロに甘い。なんだこれ。
「おやすみ」
寝る前に飲んだココアより甘いんじゃないだろうか。
八百十五話目 「窮鼠猫を噛む」→←八百十三話目 「高くつく」
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夜月レナ(プロフ) - はじめまして(*^-^*)すごく楽しんでに読ませてもらってます（語彙力orz） 更新頑張って下さい(’-’*)♪ (2019年9月6日 21時) (
レス) id: 1844904407 (このIDを非表示/違反報告)
sile - いや最高すぎません？？めちゃくそルッチさん好みにどストライクなんですが。ルッチさんオチだといいなと思ってます(してほしい)ゆっくりで構わないので更新頑張ってください！お体には十分気を使った上でですよ…？w (2019年8月18日 0時) (レス) id: 801c11ec84 (このIDを非表示/違反報告)
リリ - 最高です。これからも応援してます。 (2019年8月13日 1時) (レス) id: 199549db1c (このIDを非表示/違反報告)
レン - ウォォォォォォォォオ！！！！！！！メッチャ面白かった！！！さっっっっっっっいこっう (2019年7月18日 6時) (レス) id: dc4a31061c (このIDを非表示/違反報告)
シスター - 初めまして。シスターと申します。最初の作品から見させて頂きましたが、良い展開になって来ましたね！次が更新されるのが楽しみ過ぎて眠れないですwオチはルッチさんですかね？私の推しなので嬉しいです！ (2019年6月11日 11時) (レス) id: be6a289acb (このIDを非表示/違反報告)
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