八百十五話目 「窮鼠猫を噛む」 ページ19
アラバスタを出て三日。
海賊船に喧嘩を吹っ掛けられることも二度ほどあったが、次なる目的地である女ヶ島に向けて順調に航路を進んでいる……筈だったんですけども。
ソファの背もたれに片手をついて銀と戯れているルッチさん。俺はというとデスクで暇つぶしにもってきた書類を片している。邪魔も入らなくて最高の仕事環境だ。
いや、でもしかし気になることがある。断定はできないけど、違和感程度のそれ。
『ルッチさん』
「なんだ」
『……えっと、なんか……大丈夫ですか？』
「………はぁ、俺も焼きが回ったな」
『え、どういう……』
ぐらりと揺れたルッチさんの身体。銀が驚いたように短く鳴く。
目を見開いている俺を他所に、ルッチさんは紐を切られた操り人形のように地面に倒れ伏した。
『ルッチさん！！？』
半ば引きずるようにしてルッチさんをベッドに寝かせて内線で船に乗り合わせている医者に連絡を取ろうとしたがなぜか不在。イラつきながらも呼び出し音を聞いていたが「ぷるぷるぷるぷる」を五回聞いたところで我慢ならずに、ルッチさんの枕元に銀を置いて部屋を飛び出した。
甲板で何かを運んでいた所だったであろう船医をこれまた引きずる勢いで連れ帰った。
兎に角、ルッチさんが変なんだ！と訴えると「落ち着いてください」と冷静に返された。流石は医者、クールだね。
大きく息を吸った俺を見た船医はルッチさんに視線を戻す。脈を計ろうと首筋に手を伸ばしたところで「おや？」と声を上げた。首元にかかる髪の毛を払いのけてつぶやく。
「……これは」
苦しそうに呻くルッチさん。その首筋に小さな赤い歯型のようなものがついている。
戦闘時や暑い時は髪の毛をまとめていることもあるルッチさんだが、そういえばここ二日ほどその姿を見ていなかったから気づかなかった。
その後、幾らか調べた船医は言いにくそうに口を開く。
「ピンチマウスシンドロームですね」
『ま、マウス……って、あのマウス？』
「正式にはキュウソネコカミ病と言って、ネコ科に分類される動物やその特徴を持つ生物が感染する病気です。痛み、筋肉の弛緩、進行が進めば発熱と徐々に体は蝕まれます。人間への感染は初めて見ましたが」
『……ネコ、だもんなァ』
「それと……言いにくいのですが」
『……わーってるよ』
「で、では。一応鎮痛剤は置いておきます。何しろ人間が感染した前例がないので保証しかねますが……」
『あぁ。ご苦労さま』
窮鼠に噛まれるタマですか、ルッチさん。
八百十六話目 「獣医じゃねえぞ」→←八百十四話目 「絡まるそれはココアより」
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夜月レナ(プロフ) - はじめまして(*^-^*)すごく楽しんでに読ませてもらってます（語彙力orz） 更新頑張って下さい(’-’*)♪ (2019年9月6日 21時) (
レス) id: 1844904407 (このIDを非表示/違反報告)
sile - いや最高すぎません？？めちゃくそルッチさん好みにどストライクなんですが。ルッチさんオチだといいなと思ってます(してほしい)ゆっくりで構わないので更新頑張ってください！お体には十分気を使った上でですよ…？w (2019年8月18日 0時) (レス) id: 801c11ec84 (このIDを非表示/違反報告)
リリ - 最高です。これからも応援してます。 (2019年8月13日 1時) (レス) id: 199549db1c (このIDを非表示/違反報告)
レン - ウォォォォォォォォオ！！！！！！！メッチャ面白かった！！！さっっっっっっっいこっう (2019年7月18日 6時) (レス) id: dc4a31061c (このIDを非表示/違反報告)
シスター - 初めまして。シスターと申します。最初の作品から見させて頂きましたが、良い展開になって来ましたね！次が更新されるのが楽しみ過ぎて眠れないですwオチはルッチさんですかね？私の推しなので嬉しいです！ (2019年6月11日 11時) (レス) id: be6a289acb (このIDを非表示/違反報告)
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