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八百十三話目 「高くつく」 ページ17

ソファの横に腰を下ろす。背筋は驚くほど伸ばしているところからして、ビビっているのはバレバレであろう。しゃーない、怒られるのを覚悟してるんだから。
お互いに無言のまま五分。喋らなきゃ、でも何を?を五分も繰り返している俺だが、口を開きかけてやめるの繰り返しをしただけで、状況は何も好転しない。
何度目かわからない「どうしよう」を繰り返していると視線を感じる。横を見ればルッチさんが睨んできていて……なにこれ、今日が俺の命日?

「………チッ」
『え?』
「風呂にでも入ってこい」
「えぇ……」

もう、意味が分からないよ。









お風呂でさっぱりしたがしかし……脱衣所から出たくないね。
髪も能力で乾かした、服も着たし……やっぱり出るしかねえじゃねえか、ぐぬう。
恐る恐るドアを潜れば相変わらずソファに座っているルッチさん。俺を見るとチョイチョイと指で呼んだ。
ルッチさんの隣に腰を降ろしたところで「おや?」と気づく。目の前のテーブルに湯気が立ち昇るマグカップが二つ。

『………ありがとうございます』
「火傷するなよ」

自分もマグカップに手を伸ばしながらそう言ってきたルッチさんの声は柔らかい。どうやら不機嫌とか怒ってるとかそういうのではなさそうだ。風呂に行っている間に一体何があったんだろうか。まあ、睨まれたりどつかれたりしないのは僥倖ですけども。
ルッチさんの飲んでるのはコーヒーのようだが、俺の前に置いてあったマグカップにはココアが並々と注がれており、フーフーと冷まして口をつけると甘めだった。
お腹の中に温かいココアが流れていくのを感じた瞬間に、ポロリと涙が出た。

『あ……れ?』
「………泣くほど不味いか?」
『ちが……甘くて美味しいんですけど』
「そうか」
『美味しいです……美味しい』

ぽろぽろあふれる涙を止めようとは思うが、出ている理由がわからない以上そう簡単には止まらない。でもココアを飲むのは止まらなくて、目から次々零れる雫を拭いながらマグカップの中の甘い液体を味わう。
半分ほど飲んだところで、暫く無言だったルッチさんが小さく笑った。

「ククッ、器用だな」
『……笑わないでくださいよ』
「それは断る」

髪を梳くように撫でられる。
少し飲むのを休憩しようとマグカップをテーブルに置いた。

『ルッチさん』
「なんだ」
『………ちょっとだけ胸を貸してください』
「高いぞ」

とか馬鹿にしたように笑いながらも、ぐいっと俺の体を引き寄せるのだこの男は。

八百十四話目 「絡まるそれはココアより」→←八百十二話目 「ポエマー的なことになった」



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夜月レナ(プロフ) - はじめまして(*^-^*)すごく楽しんでに読ませてもらってます(語彙力orz) 更新頑張って下さい(’-’*)♪ (2019年9月6日 21時) (レス) id: 1844904407 (このIDを非表示/違反報告)
sile - いや最高すぎません??めちゃくそルッチさん好みにどストライクなんですが。ルッチさんオチだといいなと思ってます(してほしい)ゆっくりで構わないので更新頑張ってください!お体には十分気を使った上でですよ…?w (2019年8月18日 0時) (レス) id: 801c11ec84 (このIDを非表示/違反報告)
リリ - 最高です。これからも応援してます。 (2019年8月13日 1時) (レス) id: 199549db1c (このIDを非表示/違反報告)
レン - ウォォォォォォォォオ!!!!!!!メッチャ面白かった!!!さっっっっっっっいこっう (2019年7月18日 6時) (レス) id: dc4a31061c (このIDを非表示/違反報告)
シスター - 初めまして。シスターと申します。最初の作品から見させて頂きましたが、良い展開になって来ましたね!次が更新されるのが楽しみ過ぎて眠れないですwオチはルッチさんですかね?私の推しなので嬉しいです! (2019年6月11日 11時) (レス) id: be6a289acb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作戦隊長 | 作者ホームページ:tp://  
作成日時:2019年1月1日 21時

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