vanilla sky

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Yoohei side
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今日はスタジオへ向かう足取りが重かった。




ツアーのリハで、ライブが近づいているのが分かって
嬉しいはずなのに。



使うスタジオは､いつかの雨の日に
Aちゃんが雨宿りをしていたあのスタジオ。



入口でも、ロビーでも
あの日の雨に濡れた子猫のような彼女の姿が
思い返されてどうも気分が上がらなかった。




リハを終えて、逃げるようにスタジオを出て
早く家に帰って湯船に浸かって寝てしまおうと
帰り道を急いでいると

ふらふらと歩く女性の姿が目に入って
その既視感に思わず凝視してしまった。




何も考えずに早歩きをしていたのに
急に我に返って、

正体を探るべく一気に頭を働かせる。



とりあえず顔を確認しようと彼女のもとへ近付いてみると。






「、、、ん？」






Aちゃん？




下を向いていて顔がよく見えないし
長いこと会ってないから見間違えたと思ったけど
この雰囲気はAちゃんしかいない。



ただいつもよりアンニュイで、
何だか物憂げな空気を纏っている。






「Aちゃん？」






俺が聞くと、バッと勢いよく顔を上げた。






『か、かわみさん、？』






見えた顔つきは紛れもなくAちゃんで、
安心しかけたのも束の間。




顔を上げた拍子に大粒の涙が溢れ落ちて
涙で顔を歪ませていた。




泣き顔を俺に見られないように
急いで俯いて小さな両手をめいっぱい広げて覆い隠す。










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