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「着いたで」
懐かしい部室。ここに来たのも一年ぶりだ。
ここに、宗がいるんだ。
小さく息を飲みドアを開けると、そこには懐かしい光景が広がっていた。
お洋服の匂い、紅茶の匂い、ミシンの音、そして部屋の真ん中で作業をしている"彼"の後ろ姿。
「お師さん!」
みかの声に、ゆっくりと"彼"が振り向く。
会いたくて会いたくて仕方がなくて、でも会いたくなかった人。大嫌いで、大好きな人。
私と目があった瞬間、濃紫の瞳が揺れる
彼の第一声はきっとこれ。
「今さ…」
『今更何をしに来たのだよ』
「っ!!」
きっと彼の中で私は"裏切り者"だから
『やり残した事があって。まずはあの時、あの大事なときに姿を消してごめんなさい』
「言っておくが、僕はお前がいなくても大丈夫だ」
「お師さん、そんな言い方…」
「影片は黙っていたまえ。だから僕の為に戻ってきたのなら…」
『違うよ、私の為。それなら、良いでしょ?』
「……………」
宗は優しいから。
幼馴染の私に、キツくは当たれないんだ。
『姿を消した理由は、いつかちゃんと話すから…』
「フンッ!勝手にしたまえ!」
「お師さん!良かったなぁ、A姉ぇ♪」
『うん!ありがとう』
まだ完全にあの頃に戻れるわけではないし
そんな資格もない。
でも、私も力になりたいから。
天祥院の策略によって落ちてしまった"Valkyrie"
宗の愛する"Valkyrie"を、私にも守らせて
これ以上、宗が大事なものを失わないように
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作者名:咲那 | 作成日時:2019年4月1日 22時