Raptor２【WT】

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不眠症じゃない

そう自分に言い聞かせ瀬鳴は屋上に寝転がった

眠れないのであればずっとトリオン体のままでもいいんじゃないかと思う

けれどもいつだったか誰かがトリオン体で生活しすぎて上層部に怒られたなんていう曖昧な記憶があるせいで実行には移していない

怒られるのは嫌だ

それに疲れたら眠くなるし時折作戦室で舟を漕ぎすぎて二宮に叱られたこともある

ただベッドに潜り込むと眠れないだけ

だから不眠症じゃない

今もこのまま目を瞑ればきっと眠れる






｢まさかここで寝ようとしてないよね？｣





心の内を読まれたような言葉に目を開く

なんだか今日は来訪者が多いものだ

綺麗にセットされた金髪が視界に移る

見慣れたその顔を確認し瀬鳴は再び目を閉じた






｢こらこらこら！！｣





許すまいと肩を揺すぶられ強制的に眠気を飛ばされる

こんなことをするのは一人しかいない

同じ部隊に所属している犬飼澄晴

二宮隊のNo.2

彼のおかげで二宮隊が円滑に動けていると言っても過言ではない







｢ほーら起きて｣

｢やだー！今日はここで寝るんですー！｣

｢ランク戦期間なのに風邪引いたら二宮さん怒るよ｣







ムッと口を尖らる瀬鳴を見て犬飼は困ったように眉を下げながらそう告げる

冷たいアスファルトに広げていた腕を引かれ本格的に寝かせないという強行の犬飼に流石の瀬鳴も諦めたようでそそくさと望遠鏡を仕舞い始めた

そんな瀬鳴を待ちながら犬飼は昼間の友人と話したことをふと思い出した







｢そう言えば荒船が｢いい加減孤月の練習しろ｣て言ってたけど最近練習してないの？｣

｢あぇ〜？｣

｢何その下手な誤魔化し｣

｢誤魔化してなんかないですよ！｣






本当に誤魔化してなんかいない

己の師匠があまりにもストイックすぎて呆れてしまっただけだ

ランク戦期間中だというのに対戦で使用しない孤月の練習をするだなんて無茶にも程がある

前回の練習で痛いほど自分のセンスのなさを痛感したばかりだと言うのにまだ追い打ちを掛けてこようとするだなんて飛んでもない師匠を持ってしまったものだ







｢S級隊員昇格第一候補なんだから頑張らないと｣







ブツクサと文句を垂れる瀬鳴に犬飼はそう言った

その言葉に瀬鳴はなんだか少し寂しさを抱いた

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