Raptor２【WT】

第七章 ページ6

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狙撃手用訓練施設

二階建ての訓練施設の一階右端

ランク戦直後だというのに彼女はいた





｢おーい 瀬鳴まだかー？｣

｢あと10分待ってくださーい｣

｢それ3回目なんだけど｣






スコープから目を離さず答える瀬鳴に迅は苦笑

それさえも視界に入れず瀬鳴は撃ち続けている


離れたところに浮かぶ人型標的は見事に頭を撃ち抜かれる

今日は珍しくイーグレットを使っているようだ

普段使用しているラプターと比べたら格段に撃ちやすく安定の高いイーグレット

そうは言ってもここまで緻密な狙撃は容易ではない






｢まぁそのままでいいから聞いてくれない？｣

｢はーい｣






適当な返事

本当に聞いているのか少々疑問だ

それでも迅は続けた






｢よかったら玉狛(ウチ)来ない？｣






予想外の言葉に瀬鳴は顔を上げた

一体何を言っているんだと言わんばかりの表情

迅が見た未来通りの表情だ






｢どう？｣

｢いやいやいやいやいや！｣

｢まあ考えといてよ｣






困惑を浮かべる瀬鳴

何がどうしたらそうなるのか

話の流れが合っていない


そんな瀬鳴とは対称的に迅は見えていた

瀬鳴はそのうち二宮隊を脱退する

それがいつなのか どんな経緯があってそうなるのか

流石にそこまでは分からなかったがどんなルートを辿っても最終的に辿り着く未来は同じだった

用件を伝え終えた迅は｢じゃあね｣と手を振り訓練施設を去った




ひとり取り残された瀬鳴はもう狙撃どころではなかった

まるで心の中を読み取られているかのような感覚

もしかしなくても彼は副作用(サイドエフェクト)で未来を見たに違いない


ドクンと心臓が鳴って立っていられない

肺に溜まった二酸化炭素を吐き出すようにしゃがみ込んだ





｢……勝手に見やがって｣






ポツリ呟く

誰にも聞かれていないだろうと思っていたが故に普段より言葉に刺があるように思える



近界民との友好的な関係を望む玉狛支部

一部の隊員は玉狛を良く思っていない

三輪隊の三輪がまさにそう

彼の言うことはその通りで多くの人の命を奪った近界民と友好的な関係を築くだなんて理解できないという考えがあって当然

むしろ玉狛支部が異端的だと言える


だが瀬鳴はそんなことどうでもよかった

近界民に大切な人を奪われたこともなく恨みもない

ただ仲良くしたいとも思わない

彼女はまさに中立派だった

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