第十章 ページ25
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「荒船と瀬鳴ちゃんって喧嘩でもした?」
「気になっていたぞ 俺も」
焼きたてのお好み焼きを前に犬飼は問いかけた
視線の先にいるのはもちろん荒船
B級部隊の隊長でありながら瀬鳴の師匠でもある
ボーダー内でも屈指の仲が良い師弟関係であり頻繁に2人で訓練しているところを見かけるのだが、ここ数日全く見かけていない
人付き合いが上手い2人だがそれと同時に我が強いところもあるため喧嘩してしまったのではないかと犬飼は心配していた
「心配するな 喧嘩なんてしていない」
「それじゃあどうして」
「単純に瀬鳴を育成し終わっただけだ」
荒船は瀬鳴の前に村上も教えていた
それと同じだ
荒船のメソッドを全て瀬鳴に指導し終えたのだ
それを聞いた犬飼は納得すると同時に察した
やはりS級昇格は瀬鳴で確定したのだと
つまり今回のランク戦が瀬鳴と共に挑む最後の機会になるというわけだ
二宮隊で唯一人懐っこい笑みで空気を和らげてくれた後輩はボーダーを支える大きな存在になってしまった
鳩原が去った後の大きな穴を埋めるために見えないところで努力し、鳩原と比較されても嫌な顔ひとつ見せなかった彼女もまた二宮隊を去ってしまう
鳩原と理由が違い、賞賛すべき去り方であるというのに素直に褒めてあげられない
別にS級隊員になんてならなくてもいいじゃないか
そう言ってやりたいがきっとS級昇格は瀬鳴が望んで決まったことではない
この思いを瀬鳴にぶつけたところでまたあのヘラッとした笑い方で誤魔化させるだけなのだろう
「やっと辻ちゃんも話せるようになったのに」
「……お前はどうなんだ?」
「なにが?」
「お前は瀬鳴が二宮隊を脱退することについてどう思っているんだ?」
荒船の問いに少し悩んだ
もちろん辻も氷見も可愛い後輩だ
むしろ瀬鳴よりも2人の方が関わってきた期間も長く苦楽を共にしてきた
瀬鳴との思い出を振り返っているとはっとした
あまりにも瀬鳴との思い出がないのだ
それなりに長い間仲間として過ごしてきたのに思い出がないのだ
鳩原との思い出は嫌だも覚えているのに瀬鳴との思い出は不思議なほど思い出せなかった
「犬飼だけじゃないが二宮隊は瀬鳴のことを鳩原越しに見ていた、だから瀬鳴との思い出がないんだよ」
そんなことはないと言い返したかったが荒船の言葉がストンと腑に落ちて納得してしまった
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弓月有無%(プロフ) - コメント失礼致します!!続編もおめでとう御座います。1から拝読させて頂いてる身としても夢主掴み所無くて、色々吃驚させられました!段々と心情がわかって来てストーリー迚も楽しく面白かったです、無理のない程度に頑張って下さい、応援しております! (4月28日 21時) (レス) @page30 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
星屑(プロフ) - とても面白かったです。普段明るい夢主ちゃんの闇が少し出てきてわくわくしてたら終わっちゃってて悔しいです、、。 (3月18日 19時) (レス) @page30 id: e29b44e719 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず七味(プロフ) - とっても面白いです!主人公ちゃんの性格とか周りのキャラたちとの会話とか読んでて楽しいです🙋更新楽しみにしてます! (6月26日 20時) (レス) @page30 id: 472c7aa5ca (このIDを非表示/違反報告)
優 - すごく面白くて一気読みしました。主人公どうなるのか気になります。更新大変かと思いますが楽しみに待ってます。 (2023年3月26日 22時) (レス) @page30 id: 2253326350 (このIDを非表示/違反報告)
honoka?*゚(プロフ) - 続きめっちゃ気になります(っ´✪ω✪。`c) (2022年11月1日 1時) (レス) @page25 id: 894349be12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ばぐ | 作成日時:2021年12月19日 14時