君のため【ワールドトリガー】

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迅悠一side





俺の言葉に妃旗は溜息をついた

出水は妃旗の機嫌が悪くなることを恐れているようだ

太刀川さんは何を考えているのか分からない表情を浮かべている






「何回も同じこと言わないで」

「でも…！」

「でもじゃない 私に関わらないでって前に言ったよね」






こちらに全く視線を向けてくれないが殺気に近いオーラは嫌という程感じる

美形の怒るとなかなか怖いもんだなんて悠長なことをかんがている暇はない


あまりにも未来が転々と変わるもんだから俺も対応に困る

妃旗が遠征先で死ぬというのが一番最初に視えた未来で今見えた未来は妃旗を庇った出水が捕虜として捕まる未来

どちらもボーダーにとってはかなりの痛手

だからこちら側としては両者とも避けたい


けれど妃旗は俺の言うことに全く耳を傾けようとしない

普段ならこっちが引くのだが今回ばかりはそうもいかない

だから全て言うことにした





「妃旗死ぬよ それか出水が妃旗を庇って近界民の捕虜になる

それでもいいの？」





妃旗はその言葉を聞いてバッと俺を見た

自分が死ぬかもしれないという未来を恐れたのか友人が自分を庇って捕虜になる未来を恐れたのか

妃旗のことだから後者だということは誰でも予想が着く

出水は自分が未来に関係していると思っていなかったようで｢マジか｣と呟いた






「俺は別に構わないけど妃旗は自分と友人の命を投げ出してまで遠征に行きたいわけ？」






畳み掛けるようにそう言うと妃旗は苦しそうな表情をした

ここまで言えば流石に｢行かない｣と言ってくれるに違いない

妃旗は決して馬鹿じゃない

犠牲を出してまで進もうとは思わないはずだ






「…行く」

「え？」

「私は遠征に行く」






未来が変わってしまった

本当はここで妃旗が行かないという判断をするはずだったのに

太刀川さんと出水も驚いている






「自分のことは自分でどうにかするし出水は私が絶対に守る」





震えた声でそう言った

そんな確信どこにもない

妃旗だってそんなこと分かっている

だけど本人がそう決めてしまった以上俺はもう何も言うことができない






「…私帰る」





そう言うと妃旗はカバンを持って出ていってしまった

ペコッと一礼して出水も妃旗を追ってファミレスを飛び出して行った





「困ったね〜」





太刀川さんは遅れて出てきた料理を見ながら笑って言った

本当に困った展開になってしまった

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