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新しい弟子 ページ8

『錆兎。単刀直入に聞くけど、なんで私、木の上なんかにいるの?』

わざわざ木の上に登って寝た覚えはないし、第一そんな面倒かつ危険なことをやろうとも思わない。

「下はアイツが使ってるからな」

『下?』

錆兎は顎をつきだしとある方向へと視線を促す。
そこには市松模様の羽織を着た青年の姿があり、彼は大声で数を数えながら素振りをしていた。
その動きは見るからに初心者で、まだ剣を握って数日なのだと予測できる。

『誰? 始めて見る顔だけど……』

「あの人の新しい弟子だ」

『あの人って、鱗滝さんのこと?』

今朝まで、鱗滝さんの弟子は私一人だったはずだ。
あの優しい鱗滝さんが、ただでさえ人間関係を嫌っている私に何も言わず、新しい弟子を連れて来るだろうか?

……考えても仕方ない。
どうせ私は、明日から七日間この山からいなくなる。
当分の間彼と関わることはないだろうし、彼のことは鱗滝さんに直接聞いてみればいいだけだ。

私は錆兎から離れ、下をよく確認して枝から飛び降りる。
これでも長い間鱗滝さんに稽古をつけてもらった身だ。
さっきは突然のことで少し取り乱してしまったけど、これくらいの高さなんてどうってことはない。

「何処へ行く?」

『鱗滝さんのところに帰るんだよ。明日に備えて休みたいし、刀を折っちゃったことも謝らないと』

刀を折ってしまったのは今回が始めてだ。
……随分前に「刀を折ったらお前の骨も折るからな」って脅されたことがあったけど、冗談だと信じたい。
さすがに最終選別前日に骨を折るなんてことはしないと思うけど、幻滅はされちゃうかもな。
もしかしたら、次回の最終選別に見送られるかも……。

「無駄だ」

『無駄って、何が?』

錆兎はそれ以上何も言おうとしなかった。
私は訝しげに彼を見上げると、遠くで素振りをしている青年に背を向け、獣道を駆け出した。



……おかしい。
いくら走っても、鱗滝さんの家に辿り着かない。

どれだけ走っても変わらない景色に疑問を抱き、足を止める。
全集中の呼吸のおかげで、そこまでの疲労は感じていなかった。
私は周囲を見渡し、何か目印になりそうなものを探す。


今までずっと、長い月日を狭霧山で過ごしてきた。
言ってしまえばこの山は、私の庭のようなものだ。
夜道でも迷うことはないし、目を瞑ってでも鱗滝さんの家に戻れる自信がある。

それなのに、どうして……

目を覚ますまで→←錆兎



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紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時

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