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錆兎 ページ7

『……っ』

なんだか、凄く懐かしい夢を見ていた気がする。
忌々しい悪夢ではあったけれど、鱗滝さんとの出会いは悪夢なんかじゃない。

鱗滝さんは多分、私が信頼を置いている最後の人だ。

そうだ。
鱗滝さんとの鍛練の中で、最初から人と関わりを持たない方が楽なんじゃないかって思うようになって、それで……。

なんだか、凄く切ない感じがした。
胸にぽっかり穴が空いたような、寂しい気持ち。
私はすがりつくように、頬に触れる暖かい着物を握り締める。

……え、着物?

目の前に映っているのは、毘沙門亀甲柄の着物を握る私の腕。
顔を上げると、見覚えのある頬に傷跡がついた狐面と目があった。

『あ……』

「お前……起きたのか?」

私の口から溢れ落ちた声と、彼の驚愕の声が重なる。

私は瞬きを繰り返し、視線を上下に動かす。
狐面の青年は木の幹に背中を預けるようにして座っており、私はその足の間にいて、彼の胸に凭れかかっていた。

『〜〜っ!?』

なんとも言えない感情が沸き上がり、彼の胸を突き飛ばして立ち上がろうとする。
しかし、寝起きだからか足が思うように動かず、私の体が大きく傾いた。
同時に、ここが太い枝の上であることに気がつく。
枝の下……10メートルほど奥に土がむき出しになった地面を捉え、その高さに視界が霞む。

「危ないっ」

狐面の青年は素早く私の腕を掴むと、その腕を力強く自分の方へと引き寄せる。
ボスリと、再び私の体は彼の腕の中に収まった。

「ついさっきまで眠っていたんだ。いきなり体を動かしたら危ないだろ」

『え、あ、ありがとう……?』

真上から、お面をつけているせいでくぐもった声が聞こえてくる。
様々なことに困惑しながら、とりあえず片言ではあるがお礼を述べた。

私……なにしてたんだっけ。

最終選別の前日に、狭霧山のいつも鍛練をしていた場所にやってきて。
そしたら突然この狐面の青年が現れて、戦って、敗北して、
その後、なんだか急に眠くなって……。


……なんで木の上なんかにいるんだろ。

私が顔を上げると、狐面の彼は「こいつが目を覚ましたということは、アイツが……」など、ボソボソと何かを呟いている。

『えっと、狐さん』

「……狐?」

『貴方の名前、まだ聞いてないから』

私の記憶が正しければ、私は彼に名乗ったが、彼はまだ私に名前を教えていない。

「……あぁ、そういえばそうだったな。俺は錆兎だ」

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紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時

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