検索窓
今日:5 hit、昨日:16 hit、合計:88,895 hit

単独の刃 ページ3

始まりの合図なんてものはなかった。

狐面の青年は素早く間合いを詰め、私に向けて木刀を振り下ろす。
それを真剣で受け止め、全身に力を込めてなんとか彼を押し返した。
狐面の青年は後ろに跳び、軽やかに着地する。

想像以上に早い。

……でも、追いつけないほどじゃない!

私は大きく息を吸い込み、今度はこちらから攻めに入る。

『水の呼吸、壱ノ型 水面斬り』

刀を横に振るい、彼の胴体を狙う。
しかし狐面の青年はそれも後ろに跳んで避ける。

『参ノ型 流流舞』

水が、刀を振って生まれた風が、私の頬を掠める。
ピリッとした痛みと共に、視界の隅に赤色が映った。

続け様に技を繰り出すが、どれも狐面の青年には届かない。

……当たらない。私より、彼のスピードが勝っているんだ。
彼が避け続けていたら、私は勝てない。

『偉そうなこと言って、逃げてばっかりだね。間合いを詰めなきゃ、私に勝つこともできないよ』

苛立ちを悟られないよう、表情を出さずに挑発してみる。
これで攻撃を仕掛けてくるかと思いきや、狐面の青年は木刀を下ろし、感慨深げに呟く。

「……やはりそうか」

挑発に乗ってこない。
彼が攻めてこなければ、いくら私が攻撃しても無意味だ。

彼と同じように攻撃の手を止めると、彼は感情の見えない声で言う。

「通常の水の呼吸の型よりも、攻撃の範囲が広い。自分を含め、自分の間合いにいるものを全て切り裂かんばかりに」

『それが何?』

「お前は自分を犠牲にした単独の戦闘しかできない。複数人との共闘ができない、連携が取れないんだ」

『……だから、何?』

苛立ちを抑えきれず、ブンッと勢いよく刀を振るって風を切る。

鱗滝さんは、私の広範囲に及ぶ技を褒めてくれた。
私が秘めていた才能だと。
それに最終選別は、所謂個人戦だ。
他人のことを気にしなくても、最終選別に受かることはできる。
鬼殺隊の任務だって、単独で行っている人もいるらしい。

『一人で鬼を倒せるなら、共闘なんて必要ない。一人で勝てるなら、単独の戦闘しかできなくても、何も困ることなんてない』

「本当にそう思うか?」

狐面の青年は構え直し、険しい声で続ける。

「お前の刃では、切り裂くことしかできない。守るための刃を、お前は身につけていない」

『必要ないよ。私には守りたいものなんてないから。家族とか友とか、絆とか愛だとか、そんな私感は邪魔なだけ。私は一人で強くなれる』

失う恐怖→←狐面の青年



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
142人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 錆兎 , 竈門炭治郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。