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狐面の青年 ページ2

『いよいよ明日が最終選別か』


狭霧山の奥深く。巨大な岩がある、木々の開けた場所。
今まで修行を積んできたその場所で、澄んだ空気を肺一杯に吸い込み、小さく嘆息する。

……教えられたことは、全部できるようになった。
全集中の呼吸も、当初よりはだいぶ安定している。

無意識に、頭の横につけている狐の面に手を伸ばす。
鱗滝さんが私のために彫ってくれた、厄除の面。
紅葉の模様が描かれたそれは、今の私が持っている一番の宝物だ。

私は面の紐を外し、狐の額に自分の額を合わせる。


__最終選別、必ず生きて戻れ。

『……大丈夫だよ、鱗滝さん。必ず最終選別を突破して、立派な鬼殺隊になってみせるから』

そうすれば……私を育ててくれた恩を、鱗滝さんに少しでも返すことができるよね。



「無理だ。お前には」

『っ!?』

突然、背後から低い青年の声が聞こえた。
反射的に振り返ると、後ろの大岩の上に木刀を手にした狐面の青年が座り込んでいた。

誰……?
というかこの人、気配が全くしなかった。
近づいてくる足音一つしなかった。

私は眉根を寄せ、こちらを見下ろす狐面の少年を睨み付ける。

『無理ってどういうこと?』

「そのままの意味だ。今のお前じゃ、最終選別を突破することは不可能だ」

『……貴方にとやかく言われる筋合いはない』

突然現れた初対面の相手が、私の何を知っているのだろう。
私の努力や実力を微塵も知らないくせに、無理とか不可能だとか勝手に決めつけないで貰いたい。

「知ってるさ。全部見ていたからな」

『えっ』

まるで私の心を見透かしたような不穏な一言。
そう言うと狐面の青年は、岩から飛び降りて木刀を構える。

「来い」

私は狐面の青年をまっすぐに見つめた後、視線を下ろし腰の刀を見下ろす。

私の腰には、鱗滝さんが最終選別にと貸してくれた刀が差してある。
鬼の頸を斬る真剣__またの名を、日輪刀という。

私は真剣で、相手は木刀。
間違いなく私に利がある不公平な勝負だ。

だけど……

私は顔を上げ、再び狐面の青年を見据える。

剣先を向けられただけで感じる、ピリピリとした感覚。
そんな相手の実力を悟れないほど、私も未熟者ではない。

この人、かなりの実力者だ。

だからと言って、目の前の相手から尻尾を巻いて逃げるのは、私に指導してくれた鱗滝さんに対して失礼だ。

私は静かに鞘から刀を抜き、狐面の青年に向けて構えを取る。

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紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時

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