一緒に ページ19
前回一度会っているとはいえ、まともに会話を交わしたのはつい先程。
初対面と言っても過言ではないほど、私も炭治郎も、まだ互いのことを何も知らない。
それなのに、どうしてそこまで気にかけてくれるの……？
炭治郎はぱちぱちと目を瞬かせると、さも当然のように言う。
「そんなの、心配だからに決まっているだろ」
『……心配？』
「あぁ。誰かが怪我をしたり、悲しい思いをしたりしていたら、俺も同じくらい痛いし、苦しくなる。それが親しい人なら尚更だ」
『親しい？ 私たちはまだ、会ったばかりの他人だよ？』
「そんなことない！ 少なくとも俺にとっては、Aは他人なんかじゃない。俺が最終選別へ行けるように手伝って貰ってるわけだし、俺にとってもうAは、親しくて＿＿大切な人だ」
曇りなく淀みない綺麗な瞳を向けられ、たじろいでしまう。
なんだか炭治郎は、私とは根っから違う気がする。
心が綺麗で、澄み切っている。
朗らかな太陽のような炭治郎を見ていると……
太陽が昇ったことにより生まれた日陰のような、暗くてじめじめした、惨めな気持ちになる。
それでも炭治郎に嫌悪を抱かないのは、それらが偽りのない彼の素だということがわかるから。
正面から本気で寄り添って、手を伸ばしてくれているのがわかるからだ。
『……炭治郎のためじゃないよ。私は、私のために炭治郎の稽古に付き合うって決めただけ。最終選別を突破して、鱗滝さんの役に立ちたいから……』
「えっ、Aもまだ最終選別を受けてなかったのか？ 強いし、てっきりもう鬼殺隊に入っているんだとばかり……」
『ううん、まだ受けられてない。……刀、折られちゃったんだ。錆兎に』
私が俯くと、炭治郎はふんわりと私の両手を包み込む。
「……錆兎は物凄く強いし、そんなに気に病むことないと思うよ。努力は裏切らない。諦めなければ、必ず成果が後からついてくる。いつか錆兎に勝って、最終選別を突破できるように、一緒に頑張ろう！」
『……！』
炭治郎に暖かい笑顔を向けられる。
その瞬間、私の心が、奇妙な揺れ方をした気がした。
……なんだろ、今の。
心の芯からじわじわと暖まっていくような、気持ちが穏やかになるような。
一緒に。
＿＿“繋がり”、か。
『うん』
気がつけば私は微笑んで、小さく頷いていた。
「……」
太い枝に腰を下ろし、木の上から二人を見下ろす狐面の少年。
彼は無言で立ち上がると、彼らに背を向けて木から飛び降りた。
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紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀｀*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年8月14日 20時) (
レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです！眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです！ここからどういう展開になるのか楽しみです！更新頑張ってください！応援してます！ (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉いろは | 作成日時：2021年8月14日 10時
