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一人じゃない ページ25

「そんなことになれば、結局お前は最終選別から帰ることがない。
鱗滝さんの心の傷は癒えないままだ。

だから俺は、お前をこの山に神隠し(かくし)た。
お前の欠点がなくなり、その強さがさらに磨きかかるように。
……アイツを倒し、必ず最終選別から帰って来られるように」

錆兎はそこまで述べると、岩から飛び降り、私の前に着地する。

「俺達の声はもう、鱗滝さんに届かない。俺達では、鱗滝さんの傷を癒すことができないんだ。

……だから、頼む。俺達にできなかったことを、Aがやり遂げてくれ。最終選別から必ず生きて戻って、鱗滝さんを救ってほしい」

錆兎の声からは、やりきれない思いや様々な感情が伝わってくる。

……ずるいよ、こんなの。
怒れないし、責められない。断れるわけないじゃないか。

だって錆兎は、私欲で私を止めたわけじゃない。
錆兎の謝罪の言葉を、私は何度も聞いている。

『……錆兎と真菰は、これからどうするの?』

「Aを神隠しから解放し、ここに残る。この狭霧山で、Aが最終選別で生き残ることを願っている。

……大丈夫。Aの側には、炭治郎がいる。もう一人じゃない。
守るための、新たな呼吸も身につけた。もう失うことを恐れることもないだろう」

その言葉で、改めて錆兎が“私のために”私を神隠し(かくし)たのだと悟る。

錆兎と出会ったときに打ち明けた、失う恐怖。
錆兎はずっと覚えていてくれたんだ。
そのうえで、どうすればそれを解決できるかも考えてくれていた。

じわりと、目に涙が浮かんでくる。

『最終選別を生き残った後も、また会えるよね? これでお別れとかじゃないよね?』

「……」

錆兎は何も言わずに腕を広げ、私を抱き締めた。
背中に腕を回し、言うことを聞かない子供をあやすように、優しく。

「……約束する。Aを一人にはしない。側でずっと見守っている。だから、早くこっちに来ようなんて考えるなよ」



翌日。

錆兎は、真剣を持って炭治郎の前に現れた。

私と真菰は少し離れたところから、構え合う二人を見つめる。

……この半年で、炭治郎は目まぐるしい成長を遂げた。
錆兎からの一方的な攻撃に破れ気絶を繰り返していた青年は、もう何処にもいない。


全てが一瞬のことだった。

二人が動いた次の瞬間。


__炭治郎の真剣が、錆兎の狐面を切った。




錆兎は笑う。

昨晩、私を抱き締めたときのように。
泣きそうな、嬉しそうな、安心したような笑顔だった。

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紅葉いろは(プロフ) - 人見さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)初めての小説でいろいろ不安だったので、プラス寄りの感想が貰えて嬉しいです!更新頑張ります! (2021年8月14日 20時) (レス) id: cba06c9064 (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 面白かったです!眠っていた、という設定がすごく斬新で面白いです!ここからどういう展開になるのか楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2021年8月14日 18時) (レス) id: 0469953c81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉いろは | 作成日時:2021年8月14日 10時

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