信じない理由 89 ページ3
レオナも随分あの子のことを気にかけているらしい。
「なあオレさ、ずっと気になってることがあって」
その言葉にカリムの方を向く。
「監督生と夜に星を見に行ったんだ。空は繋がってるって話をしたらさ、あいつ泣いちまったんだよ。理由は教えてくれなかったんだけど、寮に戻るかって聞いたら『まだ見ていたいです、繋がってるから』って。オレ、分かんないんだ。監督生が泣いた理由」
繋がってるから、そう泣いた理由。家族のことを考えていたのだろうか。
「嫌だとか怖いとか、そういうのは伝わってこなかった。だから余計分かんなくて。もし監督生がまだ家族のもとに帰りたいって思ってるなら、本当に脳に作用するぐらいの禁忌魔法が掛けられてるんじゃないかって思うんだ」
「カリム･･････」
「だっておかしいだろ！酷いことされてて、毒草だって食べさせられてて、なのに帰りたいって思ってるって！助けてやりたいんだ･･････！」
「カリム、ボクたちも同じ気持ちだよ。だからこそ、監督生の情報を集めなければならない。彼女はマドルのことも知らなかった。恐らく外が分からないように閉じ込められていたんだろう。ボクたちに今できるのは、あの子がいた環境と家族が悪であり酷いことをされていたんだよと教えることだ」
「リドル･･････」
カリムの気持ちも痛いほど伝わった。頼ることを知らないのか、あの子は我慢しがちだ。もどかしくも思うし、長年の鎖を解くには長い時間が必要だと言うのもよく分かる。
「ヴィルさんは今日過ごして何かありましたか？」
アズールの質問に先程のことを思い出す。
「あの子の体が、妊娠できない体にされている可能性があるわ」
ひゅ、と息を飲んだのは誰だったのだろう。
「お昼頃にね、お腹が痛いと言い出したの。女の子だし月のものの可能性があると思って聞いたわ。そしたらあの子、言ったのよ。『ボクの体だと、来ないと思います』って」
辺りの空気が張り詰めた。
「アタシだって信じたくないわよ。もしかしたらそう言われてるだけかもしれない。でも･･････少しでも産めなくされた可能性があるから、詳しく聞けなかった」
殺気とも呼べる空気が漂う。家族が現れたらいたぶって殺してしまえるほど皆が拳を握っていた。
救わなければ、そうどこかから聞こえた。
そうだ。救わなければ。家族という悪から。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
埋夜冬(プロフ) - れおさん» 読んでいただきありがとうございます！まだまだ続きますし書きたいところが書けてないので全寮終わってからが本番です！お楽しみに！！ (11月7日 23時) (
レス) id: 7f524a9c70 (このIDを非表示/違反報告)
れお - 監督生と他寮の絡みの勘違いが最高すぎます！更新楽しみにしてます！ (10月30日 22時) (レス) @page26 id: bf0a07f8e6 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 三色団子さん» 読んでいただきありがとうございます！はてさてこれからどうなるんでしょうねー！お楽しみに！！コメントありがとうございます！ (8月4日 22時) (レス) id: 7f524a9c70 (このIDを非表示/違反報告)
三色団子 - やっとこさ気づいたかパイセン…()面白い！！更新頑張ってください！！ (8月4日 3時) (レス) @page21 id: f3a4577dfa (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 善さん» 読んでいただきありがとうございます！やっと！やっと気付いてくれましたね！オルトくんが！！！ここからイデアさん達がどうしていくのか見切り発進な作者も楽しみです！！コメントありがとうございます！ (8月1日 23時) (レス) id: 7f524a9c70 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：埋夜 冬
| 作成日時：2023年1月15日 19時
