4冊目 ページ6
急いで小野寺出版に戻ったAは編集長の愛川のところへ行く。
愛川はあの時の会議室で待っていた。
「お帰り、時ヶ瀬くん」
そう言う愛川は困ったように笑っていた。あの九条のことだ。最後に爆弾を落として帰らせたのだろう。と愛川は考えて苦笑いだ。Aはさぞ驚いたことだろう。
「あ、あの、九条湊先生って……！！」
「恋愛小説家だよ。……ただしBLの」
Aは変なうなり声をあげて座り込んでしまった。検索結果を信じていなかったわけではないが、愛川が言うなら本当だ。
いくら恋愛小説家とはいえ、もっと言い方があっただろうに……。とAは心の中で愛川を憎んだ。
「偏見持ちかい？」
「いえ。全然そんなことないんですけど……驚きました」
Aは偏見は持っていない。人それぞれだと言うのは理解している。
気持ち悪いなんて思ったことはない。
だから純粋に驚きだった、男性がBLを描いていることに。
「ところで、九条先生は何か言っていなかったかな？」
「あ、はい！確か、『採用だ』と」
その瞬間、愛川はガタリと立ちあがり口を開けた。
愛川へ思う。やはり自分の目に狂いはなかった、と。
「よくやった時ヶ瀬くん！！！」
九条は編集者を自分で選ぶ。その編集者が気に入らなかったら伝言は頼まない。気に入った編集者には伝言を頼み、今後は自分の専属編集者にする。
そんなことをしても周りは何も言わないのだ。九条は大人気作家で、腐っていない人達にも買うほどのBLを描いてしまう天才だから。
「え！あの……！？」
「採用か！いやぁ良かった良かった！！これから頑張ってくれ！」
Aは何が何だか分からない。ともかく愛川が喜んでくれていることだけは分かった。
「いや、頑張るって何を？」
やっと口に出た言葉はそれだけ。今日は頭の整理が追い付かないことが多すぎる。
「君は明日から、九条先生の専属編集者になってもらう」
「はっ！？」
いけない。ついタメ口で話してしまった。だがこんなことを言われたら、誰だって本性の部分が出てきてしまうだろう。
そして同時に悟るのだ。新人である自分に、拒否権や考える時間などないことに。
恐らく九条の言った「またね」はこうなることを見越していた発言だった。見事なフラグ回収だ。
こうして、Aの夢見た編集者生活は、九条湊という天才BL恋愛小説家により幕を閉じた。
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通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 有難うございます！ (2019年8月17日 12時) (
レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 通りすがりの葉っぱさん» ない……ですね。設定してませんでした。私は妄想するとき夢主くんを「涼(りょう)」と呼んでます！自由に付けてくださって大丈夫ですよ！！ (2019年8月17日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの葉っぱ(プロフ) - 主人公の名前って設定無しだと何になりますかね？ (2019年8月16日 14時) (レス) id: a112452463 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - アリアさん» そ、そんな……！(照)ありがとうございます！ライバルというか引っ掻き回すというかーって感じなんですけど、その分キュンキュン度をあげていきたいと思います！お楽しみに！！☆ (2019年8月10日 0時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - えちょっと続編すっごい面白そう...いや、この作者を疑うのは止めよう。絶対面白いよ!凜音の小説も待ってます☆ (2019年8月9日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年4月23日 23時
