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47歩目 ページ7

「痛……」

まさか転ばせてくるなんて思ってなかったなぁ、とAは冷静な頭で考える。
あの時のAの脳内はかなり大慌てであった。クラスで、足が絡まったとしても派手に転んだのだ。明日は絶対笑われる。ああ恥ずかしいもう学校行きたくないぃ……。

はぁ、とため息を付いてメールを開く。蒼のメールの本文には『昨日みたいに今日も一緒に帰りたいなって思って。兄さんが困らなければ一緒に帰りたいんだけど、どうかな?』と入っていた。蒼の優しさがメールでも伝わってくる。

メールに『分かった。いつものコンビニで。』と返して下駄箱に行く。すぐに蒼から『ありがとう。じゃあコンビニで待ってるね。』と返事が来た。早い。返事来るの携帯開いて待ってたのかと質問したいぐらい早かった。
転んだ時に膝間接と床がぶつかったせいで曲げる時に膝が痛む。果たして麗の怒りはいつまで続くだろうか。靴を履くのが大変だから間接は避けた方がいいな、とボーっと思う。

ただ、今日のように冷静な対応を心がけていれば麗も飽きてくれるかもしれない。今後も頑張ろう。

Aは短くため息を吐いた。蒼と待ち合わせをしたコンビニは目の前だ。気持ちを切り替えないと、蒼は勘が良いからバレてしまう。

「あ、兄さん!!」

また一緒に帰れることが余程嬉しいのだろう、蒼の笑顔がいつもより煌めいている。そこだけスポットライトが当たっているのか。お兄ちゃん眩しくて溶けそうだよ。

「お待たせ」

「ううん!全然待ってないよ!」

好きな人の笑顔は心を癒してくれる。麗のことなんて今は忘れよう。

「……あれ?兄さん、そこ汚れてるけどどうしたの?」

蒼が指した場所はズボンの裾。麗に足を掛けられた箇所だ。そこには麗の靴の跡がくっきり付いていた。
Aは察する。「あ、これはヤバい」と。

「な、何でもないよっ!?」

蒼の笑みは深まった。先程の笑顔とは違い、何かを企んでいるような黒い笑顔だ。そして、

「………そっか」

蒼は短く返事をした。絶対何か聞かれると思っていたが案外早く引いて驚いた。

「どうしたの、兄さん。帰ろう?」

「あ、うん」

分かっているからだ。Aのズボンの裾の靴跡の人物が桐島麗だと。蒼の同級生の子が目にして蒼にメールを送ってくれたから。
蒼の心の中では、怒りの火が燻っている。何とか桐島麗に制裁を下さなければ。

待っていて、A。これ以上、好きな人を傷付けさせないように証拠を掴むから。
蒼は風を受けてチラリと見えた宝石に決意を込めて微笑んだ。

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埋夜冬(プロフ) - ウェーイさん» 喜んでいただけているご様子ですね!嬉しいです! (2021年7月10日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ウェーイ - (*^▽^*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ!!無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - (^∇^) (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます!もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作者ホームページ:http://uratuku/sounewawawa1  
作成日時:2019年3月5日 23時

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